2017 .5.31

【連載7】こっそり教える、エンコーダーの秘儀

多彩なインターフェースに対応するIXARCシリーズ!~SSIとは何か?

前回前々回と2回にわたり、POSITALのアブソリュート/インクリメンタルエンコーダIXARCシリーズのウリである分解能の変更についてご紹介しました。その際に分解能を設定できるエンコーダとして、インクリメンタル型および、「SSI」(Synchronized Serial Interface)仕様のアブソリュート型が対象であることを示しました【★写真1】。

 

【★写真1】シリアル同期式のSSIに対応するエンコーダ・IXARCシリーズ。分解能を変更する際は、SSI対応の製品を選ぶ。

 

今回のテーマは、このとき説明していなかったインターフェースに関するお話です。同社のIXARCシリーズには、非常に多岐にわたるインターフェースが用意されています。これも大きな特徴のひとつといえるでしょう。対応する種類は下記のとおりです。

 

出力インターフェースとしては、一般的なHTL/TTL (RS422)から、Push-Pull SSI(バイナリ/グレイ+インクリメンタルA/B/Z相)、SSI、電圧(0~5V/0~10V/0.5~4.5V/0.5~9.5V)、電流(4~20mA/0~20mA)などをご用意しています。またフィールドバス系としては、Profibus、Profinet、DeviceNet、Interbus、EtherNet/IP、CANopen、Powerlink、EtherCAT、SAE J1939などにも対応しています。たいていのインターフェースと出力のラインアップが揃っているため、お求めのインターフェースに関しては、弊社の担当までご相談ください。

 

さて今回のメインテーマは、これらのインターフェースのうち、アブソリュートエンコーダのデータ転送に欠かせないSSIの仕組みです。SSIとは「Synchronized Serial Interface」、すなわち同期式シリアルインターフェースのことです。

 

もともとSSIは、アブソリュート型エンコーダの位置情報を送信するために、ドイツのMax Stegmann GmbHによって独自に開発された仕様ですが、すでに特許は切れています。データの通信方式は、ノイズに強いRS-422ベースで規定されています。

 

SSIは、マスター(PLCやマイクロコントローラなど)とスレーブ(アブソリュートエンコーダなど)をポイント・ツー・ポイントで結び、位置データを伝送する際に使われるシリアルインターフェースです。その信号には、制御用クロックと位置データの2種類があります【★写真2】。

 

【★写真2】SSIのブロック図。通信はRS-422がベース。クロックで同期をとりながら、データを伝送する。

 

一般的にアブソリュートエンコーダの位置データは、2進パラレルのビットで出力されます。したがってRS-422でシリアル伝送するためには、パラレル信号をシリアルに変換する必要があります。このときの制御用クロック信号は、位置データを伝送する際に同期をとって、ビットごとのデータを確実に転送するために用いられるものです。

 

たとえば、クロック信号が変化したとき、その信号のエッジをとらえて、パラレル/シリアル変換時のビット並列データが、シフトレジスタの入力値としてラッチされます。このようにして、位置データが伝送されている最中に、データが変化しないようにデータを固定してタイミングをとっているわけです。

 

位置データについては、最上位ビット(MSB:Most significant bit)から順次送信が始まり、クロック信号の立ち上がりエッジの変化が起きるたびに、シフトレジスタによって、ひとつ下位の有効ビットがデータ回線の出力としてセットされます【★写真3】。

 

【★写真3】SSIインターフェースでの信号の流れ。位置データは、最上位ビットから順次送信される。クロック信号に同期してひとつ下位の有効ビットがラッチされ、シフトレジスタから出力。最下位ビットまで送信されたあと、ポーズが入り、また次の位置データが伝送される。

 

最下位ビット(LSB:Least significant bit)までのデータがシフトアウトされたのち(データ長はアブソリュートエンコーダの分解能によって異なります)、最後のクロック信号のエッジ(立下り)をとらえてデータ転送を終了する仕組みです。

 

その後、次のエンコーダ信号を送るために必要な内部遅延時間が決定されます。これによって、連続する2つのクロックシーケンス間での最小許容中断時間が確定されます。

 

なお、アブソリュートエンコーダではシングルターンとマルチターンがあり、それぞれの位置データは異なります。これらの位置データを伝送する際には、エンコーダのクロック入力のパラメータで区別することになります。たとえばPOSITALのエンコーダでは、シングルターンのパラメータは13、マルチターンのパラメータは25になっています。

 

次回は、モータなどのアクチュエータにダイレクトに組み込めるエンコーダキットについてご紹介する予定です。それではまた次回をお楽しみに。

 

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モーションコントロールシステムが信頼性の高いフィードバックを受け取ることができるためのエンコーダのアプローチを解説しています。

 

 

 

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製品 POSITAL FRABA
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