【速報】TECHNO-FRONTIER 2023出展レポート～UBITOのエナジーハーベスト技術を活用したバッテリレスIoT機器監視システムに注目！

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2023 .8.22

【速報】TECHNO-FRONTIER 2023出展レポート～UBITOのエナジーハーベスト技術を活用したバッテリレスIoT機器監視システムに注目！

今回のコラムは、7月26日から3日間、東京ビッグサイトで開催された「TECHNO-FRONTIER 2023」のケーメックスONEブースについて速報でお届けします。弊社のブースでは、ドイツのセンサメーカーFRABAが手掛けるPOSITALのサーボモータの位置決め制御などに使う中実軸および中空軸のバッテリレスアブソリュートエンコーダキットや、UBITOのウィーガンドテクノロジーを活用したバッテリレスIoT機器監視システムを中心に出展しました【★写真1】。

【★写真1】ケーメックスONEのブース。POSITALのエンコーダキット、エナジーハーベスト技術によるUBITＯのバッテリレスIoT機器監視システムを中心に展示。

エンコーダ基板に電子回路を搭載しているのに電源レスって本当!?

POSITALのバッテリレスアブソリュートエンコーダキットは衝撃と振動に強く、さまざまなシーンで高精度な位置決めを実現します。このエンコーダキットは非接触構造のため機械摩耗がなく長寿命で、バッテリフリーのためメンテナンス作業も軽減できます【★写真2】。さらに、中空軸エンコーダキットはロボット内部にケーブルを装備する設計の際に役立ちます【★写真3】。

【★写真2】POSITALの中実軸バッテリレスアブソリュートエンコーダ（22mmと36mm）。衝撃や振動に強く、高精度な位置決めを実現。

【★写真3】中空軸バッテリレスアブソリュートエンコーダ（内径30/外径80mmと50/100mm）。中心の円内にケーブルを通せるので外装もスッキリ。特に動きが激しく捻転も多いロボットに最適。

これらPOSITALのバッテリレスアブソリュートエンコーダキットは、SSIやBiSS-Cの汎用的なインターフェースに対応していますが、さらに「エナジーハーベスト技術」を活用したバッテリフリーの回転カウンタ機能もあり、モータ制御のコスト削減にも大きく貢献します。

POSITALのエンコーダの大きな特徴は、アブソリュート型の絶対位置を保持するメモリのバックアップ電源が不要な点です。一般的なアブソリュートエンコーダでは、マルチターンの回転数を電気的にメモリで記憶するために小さな電池を搭載しています。しかし、POSITALのエンコーダは、電池が不要という点が最大のメリットです。

では、なぜそんな魔法のようなことができるのでしょうか？その秘密はエンコーダ基板に搭載されている「ウィーガンドセンサ」にあります【★写真4】。このウィーガンドセンサによって、コイルの電磁誘導により連続的に電気的パルスを発生させ、自己発電を行うことで内部の電子回路を動かしてパルスをカウントし、さらにカウントしたパルス数（絶対位置）をメモリに書き込んでいるのです【★写真5】。

【★写真4】POSITALのエンコーダに搭載されている「ウィーガンドセンサ」。電源なしにパルスをカウントし、さらにカウントしたパルス数（絶対位置）をメモリに書き込める点が最大の特徴。

【★写真5】ウィーガンドセンサの動作原理を説明したパネル。ウィーガンドセンサはエネルギー出力が大幅に向上され、従来の約50倍の出力を生成可能に。

ウィーガンドセンサの詳しい原理についてはこちらのコラムで解説しています。

ゲート通過直後に無電源センサが受信システムにデータを無線転送

これまでウィーガンドテクノロジーは、主にFRABAの主力製品であるPOSITALのアブソリュートエンコーダをバッテリレス化する技術として用いられてきました。しかし、もう少し活用の幅を広げ、「エナジーハーベスト技術」という観点で見ると、さまざまなIoT機器やシステムにも応用できることがわかってきました。

このエナジーハーベスト技術は、「局所環境からエネルギーを取り出して、電子機器に電力を供給する技術」のことです。光からの光起電力、温度変化からの熱電/焦電効果、機械的な運動による圧電/静電デバイスなどからエネルギーが得られます。ウィーガンドセンサも同様に、電磁誘導によって従来までは約200nJという微量なエネルギーを生成していました。しかし、最近では技術の進展によりエネルギー出力を大幅に向上し、約50倍もの10μJの出力を生成できるようになりました。

これによりUBITOでは、エンコーダへの利用だけでなく、ウィーガンドセンサを応用したバッテリレスIoT機器監視システムの開発に成功しました。自己発電電力によって60ｍまでデータを飛ばす低電力UWB無線機や、MCU、発振器(OSC)、外部センサを含むデジタル回路を瞬間的に駆動させ、間欠データの伝送を行うシステムとして活用できることがわかったのです【★写真6】。

【★写真6】ウィーガンドセンサを応用したバッテリレスIoT機器監視システム。「エナジーハーベスト技術」は、さまざまIoT機器やシステムに幅広く応用できる。

このバッテリレスIoT機器監視システムは、たとえばスマートホームや産業用ドアの開閉アプリケーションを始め、ポンプやタービンなど可動部品周辺のアプリケーション監視といった、電力供給が難しい場所に最適です。展示ブースでは、無電源のセンサがゲートを通過した瞬間に、その時刻のデータを受信システムに無線で転送するデモを行いました【★写真7】【★写真8】。

【★写真7】ウィーガンドセンサによるデータ伝送の簡易デモの様子。台車に搭載されたウィーガンドセンサが、永久磁石のゲートを通過した瞬間に自己発電の電力が発生し、その通過時刻のデータを無線で転送。

【★写真8】無線で転送された受信ユニットの画面。データとして通過時刻が表示されている。時刻だけでなく、温度/湿度やIPアドレスなども送信可能。

今回のデモでは、ゲートの通過時刻データのみを転送していましたが、他にも温度や湿度などのセンサデータ、エッジデバイスのIPアドレスなども送ることができます。たとえば農場や畜産場などに本システムを設置すると、どこで何が起こっているのか、電源不要で環境を把握できるようになります。これはスマート農業のファーストステップとしての足掛かりになるでしょう。

いま先進国ではSDGsを中心に環境問題やエネルギー問題が特にクローズアップされています。UBITOが開発を進めるエナジーハーベスト技術は、こういった問題解決の一助にもなるのではないでしょうか。さまざまIoT機器やシステムに幅広く応用可能なウィーガンドテクノロジーの可能性を広げて、イノベーションを起こす端緒になればと思います。