2022 .8.3

環境に優しい「エナジーハーベスティング」なら、こんなことまで実現できる!

【その1】エナジーハーベスティングを支える「ウィーガンド効果」とは?

温室効果ガス削減など環境問題が叫ばれる中、世界的に再生可能エネルギーが注目されていることはご存知の通りでしょう。企業でも可能な限りの省エネ化推進や、クリーンエネルギーを使う取り組みが行われています。そんな中、FRABAが有する「エナジーハーベスティング(環境発電)技術」は1つのエポックメイキングな技術といえるかもしれません。本技術は、自己発電により、バッテリーレスのセンサを実現するなど、エネルギー活用の観点でさまざまな応用のポテンシャルを秘めている技術なのです。今回から本技術の利活用について考えてみましょう。

 

愛よりも地球を救う!? 「エナジーハーベスティング」(環境発電)技術

では、エナジーハーベスティングとは一体どういった技術なのでしょうか?

これは太陽や照明、振動や回転、熱などのエネルギーを収穫(ハーベスト)して、電力に変換する技術のことです。ケーメックスONEのパートナーであるFRABAでは、エナジーハーベスト技術を利用した独自のバッテリーレス磁気式アブソリュート(ABS)エンコーダをPOSITALブランドで開発しています【★写真1】。

 

【★写真1】エナジーハーベスティング技術(ウィーガンド効果)を利用したPOSITALのバッテリーレス磁気式ABSエンコーダ。

 

復習を兼ねて、このバッテリーレス磁気式ABSエンコーダについて軽くおさらいしておきましょう。そもそもABSエンコーダは、モータなどの絶対的な位置(回転)を計測するセンサです。回転位置の検出は、ホール素子と磁石と電子回路により、シングルターン(1回転の分解能16bit)の位置に応じたパルスをカウントします。さらに絶対位置を記憶するために、マルチターン(最大25bit出力)の回転数も同時に検出し、その回転と位置を内蔵MPUと不揮発性メモリに記憶することで、最初の位置からどこまで動いたのか絶対位置が分かるわけです。

 

当然ですが、電子回路を使ったシステムなので電源が必要になります。不揮発性メモリにデータを記録するにも電源が必要です。このために一般的なABSエンコーダでは小さなバッテリ(電池)を内蔵しています。ところがPOSITALのエンコーダはバッテリーレスを謳っており、電池が入っていません。エナジーハーベスティング技術によって、エンコーダ自身で自己発電を行っているからです。これが他社製品と異なる大きな特徴です。

 

自己発電を可能にする「ウィーガンド効果」とは?

この自己発電の基本原理は「ウィーガンド効果」(Wiegand effect)と呼ばれる現象を利用するものです。これは、中心と外側で異なる透磁率を持つ導線「ウィーガンドワイヤ」で周囲に巻いたコイルに対し、変動磁場を加えると電気的パルスが発生する現象です。

 

ウィーガンドワイヤは、何の変哲もない針金のようですが、前述のように中心部のコアと、その周りにある表皮部のシェルで構成されています。このシェルはコアよりも抗磁性があり、磁極を反転させるには強い磁界を与える必要があります。一方、コアのほうは抗磁性が弱いため、極性が変わりやすいという性質があります。ここで外部からウィーガンドワイヤに変動磁場を加えると、面白いことに電気的パルスが発生するのです【★写真2】。

 

【★写真2】ウィーガンド効果による磁気パルスの発生。右図は永久磁石による対称スイッチング(ウィーガンドサイクル)。左図は典型的なウィーガンドパルス。パルスは磁界の強さ、変化率(磁束密度)に依存しない。

 

現在、この原理を利用した「ウィーガンドセンサ」が発売されています【★動画1】。この出力パルスのエネルギーは200nJ以下です。前述のようにPOSITALのABSエンコーダは、ウィーガンドセンサで連続的に電気的パルスを発生させ、自己発電を行うことで内部の電子回路を動かしてパルスを計測し、さらにカウントしたパルス数(絶対位置)をメモリに書き込みます。

 

 

【★動画01】

 

さらにウィーガンドセンサを大型化し、内部のワイヤやコイル、フェライトを最適化することで、低速であってもパルスのエネルギー出力を従来の30倍~40倍、すなわち約6~8μJまで劇的に増加できるのが「ウィーガンドジェネレータ」です【★写真3】。

 

【★写真3】200nJのエネルギーを出力する「ウィーガンドセンサ」(写真左)と、6~8μJのエネルギーを出力できる「ウィーガンドジェネレータ」(モジュール)。POSITALのバッテリーレスエンコーダはウィーガンドセンサを採用。

 

ウィーガンドジェネレータは、2つ以上の棒状の永久磁石を交互に磁化して動かすことで励磁することができます。このときジェネレータの位置が多少ズレたとしても、一定の出力エネルギーが保証されます。したがってセンサに多少のミスアライメントがあったとしても、正常に動作させることができるのです。また回転磁石のように、他システムを使って、ウィーガンドワイヤをトリガー信号にして、何かを処理することも可能です。

 

環境に優しい自己発電で、IoTシステムをバッテリーレス化!

さて、自己発電の基本原理であるウィーガンド効果をご理解いただいたところで、ようやく本題になります。冒頭で触れたとおり、エナジーハーベスティング技術はエンコーダのみならず、さまざまなセンサなどを用途に使える可能性を秘めています。その活用例についてご紹介したいと思います。

 

たとえば、振動などを利用し、連続的にパルスを発生させるウィーガンドセンサのようなエナジーハーベスティングシステムでは、スリープ状態のデバイスの消費量以上の電力が得られます。POSITALのバッテリーレス磁気式ABSエンコーダは、この技術を利用していました。この発生したパルスをバッテリに充電する技術があれば、さらに応用範囲が広がるでしょう。

 

一方、ウィーガンドジェネレータのようにイベントベースのエナジーハーベスティングシステムの場合は、一度に特定量のエネルギーを供給できます。システムが適切に設計されていると、イベントが発生する間に電力が供給されなくても、1回のエネルギー量でホールセンサや近接センサなどの読み取りなどを十分に実行できます。

 

さて今回はここまで。次回はFRABAグループでウィーガンド技術の開発を担うUBITOが実施したエナジーハーベスティングシステムのユニークな概念実証「UWB(Ultra-Wide band)技術によるドア開閉システム」【★写真4】を中心に活用事例をご紹介しましょう。センサの読み取りだけでなく、データ処理、ストレージ、無線送信までを、間欠的に実行できることも証明されており、IoT機器のバッテリーレス化に寄与します。乞うご期待!

 

【★写真4】次回紹介するエナジーハーベスティングシステムのユニークな概念実証「UWB(Ultra-Wide band)技術によるドア開閉システム」。センサの読み取りだけでなく、データ処理、ストレージ、無線送信までを、間欠的に実行できる。

 

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また、UBITOのウィーガンドセンサに関するTech Noteもご用意しておりますので、ご興味をお持ちの方はこちらよりダウンロードしてください。

 

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UBITO(POSITAL) ウィーガンドセンサ