2021 .1.6

Moxaの無線ソリューションがAGVとAS/RSに最適な理由とは?(前編)

無線ソリューションが求められるAGV(無人搬送車)とAS/RS(自動倉庫)

いま、工場内や物流現場で盛んに利用されている自動機械システムに「AGV」(Automatic Guided Vehicl)と「AS/RS」(Automated Storage and Retrieval System)があります。

AGVとは、無人搬送車もしくは無人搬送ロボットのことを指します。たとえば、自動車製造メーカーでは、大型パーツを自走式やライントレース式のAGVで運んだり、物流現場で商品パレットをリフトアップして搬送するなど多くのシーンで利用されています。

一方、AS/RSは自動倉庫、または無人倉庫とも呼ばれ、製品やパーツの収納・取り出しを自動化・無人化することで、作業効率を高められる入出庫システムのことです。入庫・出庫の物理的な方式によって、クレーン式(床上型・懸垂型・天井)や、回転棚式、シャトル式などがあります【★写真1】。

 

【★写真1】AGV(無人搬送車)とAS/RS(自動倉庫)のシステム。ここで産業用の特殊な無線ソリューションが活躍している。

 

いずれもコンピュータで高度に制御されており、従来まで人が行っていた過酷な作業を代わりに行って、人件費を大幅に削減することができます。たとえば、物流現場にAGVを導入すると、一般的に3割以上のコストカットが見込まれるといわれています。また非常に過酷な場所での作業にもAGVが大活躍します。たとえば鉱山現場で巨大なAGV(無人搬送ロボット&トラック)を使ったり、冷凍倉庫のAS/RSをAGVと組み合わせて使うことで、危険な場所、低温の環境で働く人を解放することが可能になります。

 

AGV自体は、1990年代から工場内でよく導入されるようになり、現在は成熟市場になっています。数年前までは1つのエリアで数台ほど稼働していたAGVが、現在は数10台以上で稼働することも珍しくありません。またAS/RSも、通販やECで大量の物品をさばく需要があり、市場が盛り上がっています。いよいよ両者のニーズが花開いた状況です。

 

このように活況を呈してきたAGV&AS/RS市場ですが、重要な点は両方とも無線通信が求められることです。AGVにはエッジコンピューティングで自動走行する製品もありますが、いずれにしても複数台で動く場合は上位コントローラ側で経路を計算した上で、AGVに走行ルートを指示し、全体的な動きを見ながら効率的に動かす必要があります。

したがって、AGVが上位コントローラからの指令を受けたり、あるエリア内で複数台動いているときは、衝突を回避する必要があり、無線通信は必要不可欠な技術になるわけです。

 

なぜMoxaの産業用無線ソリューションがAGVとAS/RSに最適なのか?

そこで大活躍するのが、Moxaの産業用無線ソリューションです。実は、AGVやAS/RS分野でみると、Moxaの製品は後発になります。しかし、1つのエリアでAGVが同時に複数台稼働するような案件においては、Moxaの製品が最適といえるでしょう。他社製品の場合では、せいぜい10台ぐらいしかAGVを稼働させることができないからです。

 

Moxaの場合、大規模エリアで数百台のAGVを稼働する案件にも対応しています。それがMoxaの無線ソリューションの大きな強みになっています。すでに製品が発売されてから何度かグレードアップしており、新世代の製品では、より大規模な案件にも対応できるようになっています。

 

では、ここからはMoxaの具体的な製品について簡単に紹介しましょう。AGVやAS/RSの利用に最適化されているのが、産業用無線ソリューション「AWKシリーズ」です。

無線通信をする際には、子機(CL:クライアント)と親機(AP:アクセスポイント)がセットで必要になります。AGVに搭載する子機としてはAWK-1131A【★写真2】と、コンパクト化した最新モデルのAWK-1137C【★写真3】が用意されています。一方、親機のAPにはAWK-3131A【★写真4】があります。

 

【★写真2】「AWK-1131A」。APとCL両方で利用できるが、AGV本体に搭載してCLとして利用されることが多い。

 

【★写真3】最新モデルの「AWK-1137C」。AWK-1131Aよりコンパクトにして、AGV本体に搭載しやすくしたモデル。

 

【★写真4】主に親機(APまたはブリッジ)として使用される「AWK-3131A」。最大60台までのCLをサポートできる。

 

これらMoxa製品の特徴は大きく3つ挙げられます。まず機能面ですが、最近のAGVは走行速度が速く、工場内を高速に走り回っています。しかも移動範囲が広いため、AGVに子機を乗せ、APと無線通信をしている際に、あるエリアを超えるとローミングが発生し、APを切り替える必要があります。

そのときAGVは高速で走っているため、ローミングも高速に切り替えなければなりません。Moxaの製品は、高速鉄道で鍛えられた実績がAGVでもいかんなく発揮されており、AWKシリーズではローミング時間は150msと高速です。

 

また、ハードウェアにおいても大きな特徴があります。AWKシリーズは、AGVに子機を搭載する際の安定性が保証されています。当然ですがAGVが動くには駆動源が必要で、AGV本体にはバッテリとモータが搭載されています。しかし走行中に供給電源が変動するため、通信が不安定になることがよくあります。そこでAWKシリーズは、本体内部に専用のDC-DCコンバータを搭載しており、常に安定した電源電圧を確保しています。

 

また、AGVのモータが駆動するとき、通信アンテナの延長ケーブルにノイズが乗ってしまうことがあります。これにより内部基板のチップが慢性的にダメージを受け、寿命が短くなったり、故障してしまうリスクが高まります。それを防ぐために、電源とアンテナまわりに絶縁対策が施されています。

このような対策は非常に細かい点ですが、他の無線通信製品にはこういったハードウェア面の工夫は施されていないケースが多いと思います。というのも、いま説明した電源やノイズ対策は、これまで私たちケーメックスONEが実際にお客様から頂いたご要望をMoxaのエンジニアに伝え、標準仕様として改善を実現してもらったという経緯があるからです。

さらに我々は、AGVやAS/RSを使いやすくするために、独自の特別仕様をMoxa製品に盛り込んでもらった「KSモデル」(ケーメックスONEモデル)も提供しています。

次回は、この特別仕様のモデルと、ここではお伝えしきれなかったAS/RS(自動倉庫)側にまつわる話題を取り上げたいと思います。それでは、次回もお楽しみに!

 

コラムで取り上げた製品についてはこちら

製品 MOXA
産業用無線AP/CL
AWK-1131Aシリーズ
MOXA
産業用無線CL
AWK-1137Cシリーズ
MOXA
産業用無線AP/CL
AWK-3131Aシリーズ