2017 .3.6

【連載4】こっそり教える、エンコーダーの秘儀

自己発電機能を備えた磁気式アブソリュート型エンコーダ

前回は、POSITAL社ロータリーエンコーダIXARC シリーズの磁気式アブソリュート型エンコーダの構造と特徴について触れました。特徴の中でも、他社にない差別化のポイントとして、バッテリなどの電源がないことを示しました。今回は、この仕組みについて掘り下げてみましょう。

そもそも電子機器であるエンコーダが、なぜ電源がなくても機能するのでしょうか? 不思議な話ですよね。マルチターン(多回転)の絶対位置をカウントし、そのデータを記録するために、回転データを記憶素子に保存する必要があります。当然ですが、その際に電源が必要になります。この電源を供給するために、エンコーダ自身で自己発電を行っているのです。

この自己発電の基本となる原理は「ウィーガント効果」(Wiegand effect)と呼ばれる現象を利用するものです。これは、中心と外側で異なる透磁率を持つ導線(ウィーガントワイヤ)の周囲に巻いたコイルに対し、変動磁場を加えた際に電気的パルスが発生する現象のことです。

ウィーガントワイヤは、何の変哲もない針金のように見えますが、実は前述のように中心部のコアと、その周りにある表皮部のシェルで構成されています。このシェルはコアよりも抗磁性があり、磁極を反転させるためには強い磁界を与える必要があります。一方、コアのほうは抗磁性が弱いため、極性が比較的に変わりやすいという性質があるのです。

ここでウィーガントワイヤに外部から変動磁場を加えると電気的パルスが発生する面白い現象が起きるわけです。図を追ってご説明していきましょう。

まずウィーガントワイヤには、下図のようにバックグランドとして、外部から常に弱い磁界がかけられていることが前提となります。この際、ウィーガントワイヤの磁界はコアもシエルも外部磁界方向と同じ右方向(→)を向いています【★図A】。

ここで磁気式エンコーダのセンサに使われる回転磁石が近づいたとします。すると磁石によって左向き(←)の強磁界が加えられるため、バックグランドの弱い磁界(→)は打ち消され、左向き(←)の外部磁界に変化します。

このとき、極性が変わりやすいウィーガントワイヤのコア部は、外部磁界の影響を受けて磁界が反転し、左方向(←)になります。その時に電気的パルスが生じ、そのパルスをコイル部が受け、電圧に変換します【図B】。

さらに磁気式エンコーダの磁石が回転すると、今度はウィーガントワイヤのシエル部も外部磁界の影響を受けて、コア部と同様に磁界が反転して左方向(←)になります【★図C】。この時も電気的パルスが発生しますが、コア部の反転パルスよりも小さく、検知しないようにしています。

また磁気式エンコーダの磁石は回転し続けますが、ウィーガントワイヤの磁界方向は、外部磁界の方向と同じままで、左方向(←)です【★図D】。さらに磁石が回転すると、徐々に外部磁力の影響が弱くなり、再びバックグラウンドの磁界が復活し、元の状態の右向き(→)に戻ります。

ここで、ウィーガントワイヤのシエル部は抗磁性のため、まだ極性は変わらず左方向(←)を維持していますが、コア部のほうは外部磁界の影響を受けて、元の状態に極性が反転し、右向き(→)になります。ここで、また電気的パルスを発生します【★図E】。

さらに磁石が回転すると、シエル部も極性が反転して右向き(→)になります。ここでも小さな電気的パルスを発生しますが、電圧として検知しないようにしています【★図F】。

このように、POSITAL社の磁気式アブソリュート型エンコーダは、ウィーガント効果を利用し、連続的に電気的パルスを発生させ、自己発電を行うことで内部の電子回路を動かしていることになります。無電源でもエンコーダのパルスを計測でき、さらにカウントしたパルス数(絶対位置)をメモリーに書き込めるのです。バッテリレスであることは、副次的にエンコーダのサイズをコンパクトに設計できることにもつながります。

このほかにも、まだ IXARCシリーズには他社にないユニークな機能が隠されています。エンコーダ選びのために重要なポイントとなる分解能に関するトピックスです。また次回その秘密について、ご紹介したいと思います。

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