産業用イーサネットスイッチとは?what-industrial_ethernet_switch

産業用イーサネットスイッチとは?

 

よく耳にするイーサネットスイッチとはどんなネットワーク機器?

イーサネットスイッチとは、複数のPCや機器間のネットワーク(イーサネット)を構築する際に、効率的な中継機能を果たすスイッチングハブのことです。では、スイッチングハブとはどんな装置でしょう? 当初コンピュータネットワークで中継に使われていた装置はハブでした。ハブ自体は単に中継しかせず、ポートに接続されたすべてのPCや機器に対して、無条件で物理層からデータを再送出していました。

 

しかし、これではデータを送りたい相手のPCや機器以外にも、余計なデータを流してしまいます。そのためネットワークのトラフィックが上がって、全体の負荷がかかってしまいます。そこで1990年代に入ってから発売されたのがスイッチングハブでした。これは、相手先のPCや機器に固有に割り振られている「MACアドレス」を特定し(スイッチングハブに登録されたMACアドレステーブルと比較し、相手の転送先ポートを判断)、必要なポートのみに通信データを出力するため、機器間の通信を効率的に行えるようになるわけです。

 

ちなみにMACアドレスは、国際標準規格である「OSI7階層参照モデル」のうちレベル2に当たるデータリンク層で定義されているため、スイッチングハブのことを「レイヤ2スイッチ」、あるいは「L2スイッチ」とも呼びます【★図1】。

 

【★図1】ハブとスイッチの違い。ハブは受信ポートからの信号を、他のすべてのポートから垂れ流す。一方スイッチは特定の機器のMACアドレスを見て、その機器に信号を流す。

 

産業用と一般用のイーサネットスイッチの違いはどこにあるのか?

ここまでは、一般用(商用)イーサネットスイッチの説明でしたが、弊社が取り扱っている産業用イーサネットスイッチは、商用の一般的なスイッチとは異なるものです。もちろん、通信がイーサネットである点は、一般用も産業用も本質的には変わりません。しかし産業用製品は、機能面と性能面で商用製品より優れています。

 

たとえば、産業用では、さまざまなフィールドバスとの相互接続性、リアルタイム通信性、ネットワークセキュリティ、デバイスの冗長性、本質安全性、セキュリティ面などの対策が施されています。そのなかでも、次セクションで紹介する「マネージドスイッチ」は、セキュリティ面や管理面で非常に優れていますので、ぜひ記憶に留めておいてください。
また、外部環境への適応という点でパフォーマンスの違いもあります。炭鉱や船舶などの多くの過酷環境に加えて、産業環境ではEMI(電磁適合性)や、振動・衝撃・腐食、温度・湿度、粉塵・防爆などの特別要件が加わります。特に温度は産業用ネットワーク機器に大きな影響を与えます。そこで、これらの要件を満たすように設計されています。

 

また電源関係も、商用製品は基本的に単電源ですが、産業用製品の電源は一般に二電源バックアップになることが多いのです。動作電圧も産業用では幅広い動作電圧範囲をカバーしています。そのほか、取り付け方法も産業用ではDINレールとラックに取り付けられるものが用意されています。

 

製造業のDX化を左右する! 産業用イーサネットスイッチの種類とは?

産業用イーサネットスイッチは、大別すると「アンマネージドスイッチ」と「マネージドスイッチ」の2種類があります。現在、日本の製造業の現場では安価なアンマネージドスイッチが多く使われています。しかし他業界、たとえば鉄道や電力などのインフラネットワークでは、機能面やセキュリティ面を考慮してマネージドスイッチが使用されています。

 

アンマネージドスイッチは、従来のスイッチングハブと同様の機能を持ちます。繰り返しになりますが、多くのレガシーシステムでは、アンマネージドスイッチが使われていることが多いです。というのも安価で、ケーブルを接続してプラグ&プレイで手軽に動作し、接続機器のMACアドレスを自動管理でき、パケットを伝送先の機器へ届けられるからです。それほど高度な管理は求めておらず、単に機器同士を接続できれば良い、安価に済ませたいというニーズに合っているでしょう。

 

しかし、高品質で高信頼性のネットワークや、高度な制御が求められる産業分野では、やはりマネージドスイッチが必要不可欠になります。マネージドスイッチは、その名の通りネットワークを管理できるスイッチで、現在はアンマネージドスイッチよりも高額ですが、リスクに対応した多くの機能を備えています。

 

トラフィック増大時にネットワーク負荷分散(QoS設定、VLAN設定、リングアグリゲーション設定などに対応)、冗長化によるシステムダウンの防止(ループ阻止、冗長化プロトコル、リングトポロジー対応など)、あるいはセキュリティ対策(アクセスコントロール、Dos攻撃防御、フィルタリング機能など)、トラブル時のネットワーク分析(SNMP、SYSLOG、ポートミラーリング対応)などにマネージドスイッチが役立ちます【★表1】。

 

【★表1】アンマネージドスイッチとマネージドスイッチの違い。前者は価格は安いが、機能面で考えるとマネージドスイッチに軍配が上がる。

 

なおマネージドスイッチは、通常はRS-232シリアルポート(またはパラレルポート)、Webブラウザ、専用ソフトウェアなどを使用して管理や設定が可能です。

 

ここを抑えたい! 産業用イーサネットスイッチの選び方のポイント

さて、産業用イーサネットスイッチの種類と機能を理解できたところで、具体的な製品選びをどうするか? という話になります。一般的な選定条件として、以下のような要件を考慮するとよいでしょう。

 

【選び方のポイント】
・必要なポート数が装備されているか?
・必要なパフォーマンス(高速性)が確保できるか?
・信頼性(冗長機能)が確保されているか?
・セキュリティ面で安全性が担保できるか?
・耐環境性は大丈夫か?(堅牢性、防塵・防爆、IP規格対応など)

 

まずポート数ですが、接続可能なデバイス数により決めます。最近のスイッチは高集約化が進んでいます。速度との兼ね合いにもなりますが、1台のスイッチで2~64個のポートを収容できる製品が一般的です。またスイッチ同士を接続し、利用可能なポート数を増やすスタック機能を備える製品もあります。

 

高速性に関しては用途に依りますが、イントラネットでは10Mbpsや100Mbps(ファストイーサネット)、ビデオファイルなどの重いファイル転送では1000Mbps (GbE:ギガビットイ-サ)、さらに最新ネットワークを展開するなら10Gbpsが必要です。大容量データ転送や異デバイス間の長距離通信には約100Gbpsが可能な光ファイバ-が用意されています。

 

冗長性、耐環境性、セキュリティ、関しては、前セクションで触れた通りです。いずれにしても、閉じられていた工場のレガシーシステムから脱却し、オープン化を進めて、インターネットへの接続が加わると、セキュリティ対策は必須になります。その際にマネージドスイッチが一役買ってくれます。またネットワーク故障診断でも専用ソフトなどで原因を迅速に特定できます。将来を見据えてマネージドスイッチへの切り替えを視野に入れておくと良いでしょう。

 

こんなことまでできる! マネージドスイッチの最新動向

工場のスマート化やIoT化、エッジデバイス対応など、これから製造業のDX化はどんどん進んでいくでしょう。そのとき工場システムの根幹を支えるのはネットワークと関連周辺機器です。その代表となるマネージドスイッチを導入することで、ネットワークの信頼性や管理、セキュリティ対策の準備が整います。

 

最後になりますが、参考として最新マネージドスイッチの情報に触れておきます。マネージドスイッチは障害時にネットワークを高速復旧し、信頼性を高める機能が具備されています。たとえば、弊社で取り扱うMoxaのマネージドイーサネットスイッチ【★写真1】は、QoS、VLAN、ポートトランキング(リンクアグリゲーション)などの機能をサポートしていますが、これ以外にも独自の冗長化機能「Turbo Ring」と「Turbo Chain」により、ネットワークの高速復旧(最速20ms)と信頼性を格段にアップしています。

【★写真1】MOXAのマネージドイーサネットスイッチラインナップ。

 

また、ネットワーク設定の簡素化と障害時の原因を特定する専用オプションとして、スマートフォンなどで現場の作業員がいつでもネットワークや機器の状況をモニタリングできる産業用管理ソフトウェア「MXview」や、1回の設定で他の機器も簡単に設定可能なネットワーク構成ツール「MXconfig」、トラブル発生時にConfigやsyslogなどのデータをSnap Shotに収めるネットワークスナップショットツール、これらをワンパッケージにした「MXstudio」なども用意しています。ぜひMoxaの産業用イーサネットスイッチの導入をご検討いただければ幸いです。

Moxaの産業用イーサネットスイッチラインナップ