2023 .2.16

【技術部のお仕事】製品選定からアフターフォローまでトータルに対応するIPCチーム

 

ケーメックスONEでは、製品販売だけにとどまらず、社内の技術部門によって、高い付加価値と高品質な製品を皆様にお届けしています。連載「技術部のお仕事」では前回、ケーメックスONEが世界中の製品を提供するにあたり、技術商社として徹底した品質管理を実施していることをご紹介しました。さて、第二回目となる今回は産業用PC、いわゆるIndustrial PC(以下、IPC)の出荷前検査やサポートを担当している技術部の菊池雄一郎に話を聞きました【★写真1】。

 

【★写真1】ケーメックスONE 技術部 IPCチーム 菊池雄一郎

 

プランニング段階から細かい部材構成や品質サポートをご提案

ケーメックスONEは、IPCをお届けする際に出荷テストを中心に厳しい品質検査を行っています。まず、営業担当が基本的な仕様やカスタマイズの内容をお客様からヒアリングし、仕入れ先の各メーカーに製品を発注します。これらのIPCに対してOSのインストールや、各部材の仕様が満たされているかを検査し、出荷しています。

 

「私たちの主な仕事は、自動車製造に例えればトラックを出荷するようなものです。トラックの架台は千差万別です。長い電柱を運んだり、消防車のような専用機器を積んだりする特殊車両と同じように、IPCもさまざまな仕様があります。出荷時には、この細かい仕様が満たされているのか、十分に検査しなければなりません。実際にお客様のご要望は多様です。先進的な技術に対応することもあれば、過去の資産を活用できるレガシー技術を使いたいということもあります」(菊池)。

 

古い機器もまだまだ使いたい、というご要望はとても多く見受けられます。こういった場合、サポートが終了しそうな古いOSの使用や、データ収集を複数のレガシー計測機器から行うなどの要件があり、実現のために奔走します。レガシー計測機では、多くのシリアルポートが必要なため、ラックマウント型IPCにして、マザーボードのシリアルポートのほかに専用ボードを追加し、多数のポートを搭載した製品として提案することもあります【★写真2】。

 

【★写真2】IPCチームの現場の日常。検査・検証ルームには、さまざまな検査機器や測定機器が並ぶ。

 

また先進的技術を取り入れたいニーズの代表的なものとして、近年工場ラインで製品を検査する際にAIが使われる事例があります。このような場合はGPUを搭載したIPCが求められます。GPUを利用する際には、見かけ上で仕様を満たしていても、本当にパフォーマンスを発揮できるのか、製品提案時に私たちでチェックが必要になります。

 

「たとえば、GPUの処理が速くても、他のデバイスが追い付かなければそこがボトルネックになってしまいますから、バス転送速度が適正かもチェックします。GPUは多くの電力を使いますので、キャパシティプランニングの面から電源容量のチェックも重要です。また、電源コネクタや、拡張バスなどが適切な仕様のものか事前に確認し、ご提案しています。」(菊池)【★写真3】。

 

【★写真3】IPCチームの仕事の1つ。カスタマイズされたIPCの仕様を検査する。

 

このようにプランニング段階から、事前にパフォーマンスや品質を担保できるようにお膳立てをするのが、技術部IPCチームの重要な仕事の1つになります。いわば産業用PCのコンサルティングのような仕事になります。

 

そのあと製造チームが、専用ソフトウェアを利用し、各種動作試験を全数チェックします。CPUの動作、メモリ、SSDといったメモリのリード/ライト、ネットワーク、シリアルポートなどを一括検査し、エラーがないかを確認します【★写真4】。

 

【★写真4】ときにはロジックアナライザやデジタルオシロなどを駆使して波形解析も行う。

 

トラブルの原因は徹底解明するのがケーメックスONEの流儀

技術部IPCチームでは、お客様の現場でトラブルが発生した製品について社内検証を実施しても、現象が再現されないなどの予期せぬ事態に追われることもあります。こういったケースでは、私たちが実際にお客様の現場に行って検証をし、状況を把握することもあります。

 

「工場ラインで薬品を自動選別する画像認識ロボットがあり、そこで私たちが提供したIPCが導入されていました。連続稼働していると画像判定の速度が落ち、最終的にフリーズするという現象が起きました。ただ社内検証では、ネットワーク試験をしても現象が再現されなかったのです。そこで現地まで赴き、現象を目視で確認しました」(菊池)。

 

こういった現象は「システムとの相性」で済まされてしまうケースも多いのですが、ケーメックスONEでは技術部が徹底的に検証して原因を究明しています。本事例では、ネットワークチップがビッグパケットを受け取るとパワーマネージメント機能が働き、フリーズしてしまうというバグが判明しました。そこでパワーマネージメント機能を切り、ファームウェアもアップグレードすることになりました。

 

また以前、お客様がIPCを海外へ発送するとトラブルが発生しやすいという報告がありました。そこで産業試験センターに通って、輸送条件をもとに振動試験を実施しました。

 

「これにより配送には問題ないことを証明することができました。このように、基本的に私たちIPCチームは、できることについて可能な限りチーム内で対応しています。ほかにも前回紹介した恒温槽での温度/湿度試験やエージング試験などを実施しています。またESD(放電耐性)試験装置によって、耐性を見ることもあります」(菊池)【★写真5】【★写真6】【★写真7】。

 

【★写真5】恒温槽もあり、ここにIPCを入れて、エージングなどの試験も行える。

 

【★写真6】IPCの基板やフィン、放熱板、各種電子部品などの温度をサーモグラフィで測定。

 

【★写真7】必要に応じて、ESD(放電耐性)試験装置によって、耐性を見ることも。

 

こういった事態への対応策として一般的なものとして、部品を交換するケースもあります。その都度最適なご提案をする側としては、部品の交換がベストであるとは言いづらいのですが、産業用向けのIPCの場合は特に、できるだけ長期的に同じ製品を使用したいというご要望が高く、長期メンテナンスの一環として、交換できる部品をご提案させていただくこともあります。

 

こうすればIPCは長く使える!IPCのスペシャリストによる選定ポイントとは?

「IPCはコンピュータなので、いつかは壊れる宿命ですが、正しい使い方をしていただき、できる限り長くご利用いただけるように皆様にアドバイスし、サポートできるように心がけています」(菊池)と語るように、ケーメックスONEではできるだけ長くお客様が製品を使用していただけることをモットーにサポートをしています【★写真8】。

 

【★写真8】長年IPCを担当してきた経験から、長く使えるIPCの選定ポイントについて指南。サポートやメンテナンスの重要性を力説。

 

そこで今回は、IPCを長く使うために皆様に考慮していただきたい選定ポイントを菊池に聞いてみました。

 

「IPCの選定には、要件定義のほかに、コスト・納期・サイズという重要な3つの要素があります。この3つがバランスよく組み合わさるよう製品を選ぶことが大切です。特にこれら3つの要素は長期的な視点で考慮する必要があります。もちろん初期のコストが安い製品を選ぶことは重要ですが、IPCの特殊性を鑑みたとき、コストだけに力点を置きすぎると、供給や納期の安定性が脆弱だったり、後々の不安要素は多くなったりすることも考えられます。さらにランニングコストや万が一の修理コストなども考えたうえで選定しないと、最終的に余計な費用が掛かってしまうケースもあります。また、IPCに関するご相談をいただく際は、これらのほかに、ぜひその利用環境や現在抱えているお悩みもお知らせください。工場が海辺にあり、塩害の影響でIPCのコネクタが錆びてしまったといった例もありました」(菊池)。

 

一言にIPCといっても、その利用方法や場所によって様々なソリューションが可能です。私たちケーメックスONEでは、IPCのスペシャリストがこのような環境的な課題なども考慮したご提案をさせていただきます。ぜひ一度担当者までご相談いただけると幸いです。