2022 .11.10
物流向け無線ネットワーク構築の課題と導入事例(その1)~ Moxa製品の優位性を示す8つのポイント
ケーメックスONEは、Moxaの正規代理店で最も無線ネットワーク構築を得意としており、その採用実績も豊富です。そして、その中で代表的なものとしてまず挙げられるのが、生産現場のAGV(Automatic Guided Vehicle)システムへの適用です。また、自動倉庫のシャトルシステム、低温倉庫での安定稼働、フォークリフトの監視システムなど、Moxaの製品は物流の分野において数多く採用されているのが特徴的です。では、実際の物流現場でよく相談される無線通信の課題とは、一体どのようなものだと思われますか?
その筆頭として挙げられるのは、以下のような物理的な問題なのです。
物流分野の物理的な環境における無線通信の課題と解決方法
① 移動体との通信環境の構築
無線通信データには、ログ/監視/制御と3種類あり、このうち制御データに関しては、早い通信速度とレスポンスが要求されます。例えば、工場内でAGVのように自動走行をしている機器は、各アクセスポイント(以下、AP)を切り替えながらの移動になるので、APを切り替える際(ローミング)の時間が問題になることがあります。その間は制御系のデータが送れなくなってしまうからです。そこでローミング時間をいかに短縮するかが重要なポイントになります。
ここでMoxaの無線通信機器の優位性が発揮されます。APはローミング用コントローラが要らず、暗号(WPA/WPA2)に対応しながら、150msという高速ローミングが行えるからです。これによりシームレスな移動体通信を実現することが可能になります。物流現場では高速な搬送が多くなっていますが、150msのローミング時間ならば、ほとんどのケースで対応することができるでしょう【★写真1】。
【★写真1】
② 遮蔽物による無線通信の遮断
物流現場の自動倉庫は遮蔽物が非常に多いですよね。そのような場所で無線通信を行うと、電波(WiFi信号)が届かないことがあり、走行中のAGVが誤動作する恐れがあります。そのため、ケーメックスONEでは、AGVの前後と斜めに対称のアンテナを2基ほど配置し、MIMO技術(Multi Input Multi Output)によって、同じ電波を同時に送信・受信することで、通信品質を向上させています【★写真2】。
【★写真2】
③ 環境要因による製品寿命の短さ
最も手ごわい課題がこの製品寿命に関するものです。物流などの現場では、電磁ノイズによる機器のダメージが大きく、製品がすぐに故障してしまう可能性があります。具体的には、電源部からの突入電圧やアンテナ部からケーブルを経由したノイズ、モータ駆動部からのノイズなどの発生が影響を与えています。そこでMoxaの無線製品は電源の絶縁によるサージ対策や、アンテナからのノイズ対策などを施し、無線LAN部品を守ることで、デバイスの寿命を延ばし、通信の安定性を担保しています【★写真3】。
【★写真3】
④ 要耐環境性能
物流分野では現場の温度対策も重要です。というのも、特に冷凍倉庫の場合、その周囲温度は氷点下以下、例えば-20℃~-30℃は当たり前なのです。一般的な無線製品は動作温度が0~55℃ほどですが、産業用のMoxa製品は-40℃~70℃と動作範囲も低温から高温まで幅広く対応しています。これはハードウェア性能に優れた電子部品を厳選して採用していることで可能になっています。またMoxaの製品はIEC60068-2-6やIEC61000/EN61000/CISPR32といった規格にも準拠しており、振動やノイズ耐性にも優れています。そのため一般製品と比べて5年以上の製品保証に対応しています【★写真4】。
【★写真4】
ここまでは外的環境に起因するトラブルと課題に関してMoxaとケーメックスONEが講じている対策について説明してきました。続いて無線システムそのものについての課題とその解決策についてご紹介しましょう。
物流分野のシステムにおける無線通信の課題と解決方法
⑤ チャンネル干渉問題
無線通信の課題として筆頭に挙げられるのが、チャンネルの干渉問題です。昨今は物流倉庫でも多くの無線システムが利用されていますが、一般的な2.4GHz/5GHz帯はチャンネル干渉を起こしがちです。干渉が起こると混線や通信の遅延が発生しやすくなります。さらに5GHz帯の特定チャンネルは気象レーダなども利用するため、もしレーダ波を検知したら、法律で他チャンネルへ変更が義務付けられています。安定した通信のためには、このようなDFS(Dynamic Frequency Selection)の影響をなくすことが大切です。ケーメックスONEでは、これらの課題を解決する通信帯域4.9GHz帯での通信が可能な「KSシリーズ」を取り扱っています。空きチャンネルの不足や電波干渉でお悩みの場合には、このKSシリーズをご提案しています【★写真5】。
【★写真5】
⑥ サイトサーベイの難易度が高い
無線LANを構築する際に、最初にすべきことはサイトサーベイです。これにより、現場の電波状況を確認し、ローミングの切り替えポイントやAPの電波出力の調整などを行います。ところが、サイトサーベイを実施する際は、メーカー専用のソフトウェアを使うことが多く、難易度が高いという声が挙がっていました。そこでMoxaでは、最初から機器にサイトサーベイの機能を内蔵し、無線接続される前の見えない通信を視覚化し、無線通信の状況をリアルタイムにわかりやすくグラフ化できる機能を用意しています。たとえば、セッション確立要求や認証要求の送受信などもビジュアライズされ、ローミングポイントも導入しやすいようにしています【★写真6】。
【★写真6】
⑦ サイバー攻撃に対する脆弱性
最近は工場のOT環境でもセキュリティ対策が叫ばれています。現場がサイバー攻撃を受けてラインが一時停止した事件なども報道されているため、悪意ある攻撃から工場ネットワークを守ることは急務となっています。そこでMoxaでは専用のセキュリティボックス(IPS/IDS)を用意しています。この製品は、スイッチやハブネットワーク機器などの手前に、あとからポン付けするだけで機能するため、手軽に導入することができます。もし何か怪しげな挙動や攻撃があった場合、「VIRCHAL PATCH」機能により、その通信を遮断することが可能です。セキュリティパッチを更新できない古いWindows OSやPLC、産業用ソフトウェアを守ってくれるでしょう【★写真7】。
【★写真7】
⑧ デバイスの管理と監視
無線LANや有線LANで、万が一何かトラブルが発生したとき、現場で問題を解明することは非常に大変です。システムあるいはネットワークのどこに原因があるのかを特定するために切り分けが必要になります。そこでMoxaでは、ネットワークの稼働状態を常に監視し、デバイス管理が可能な「MXView Wirelss」を提供しています。これにより無線LANのどこで断線が起きているのか、迅速なトラブルシューテイングを行うことができます。MXView Wirelessのダッシュボードは、全APのトラフィック状況や稼働状況、エラー数、信号強度、ノイズレベルなど、かなり詳細なデータをグラフ化でき、3日分のデータをログとして保存しています【★写真8】。
【★写真8】
このようにMoxaのソリューションは、物流現場において、無線LANに関わる課題を十分に解決できる多くの対策を講じています。ご興味がある方は、ぜひ弊社のMoxa担当までご連絡いただければ幸いです。
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