2017 .9.1

【連載10】こっそり教える、エンコーダーの秘儀

システムや機械の傾斜角を、正確かつ高応答性で計測する秘

前回は直線移動量を計測するPOSITAL社のリニア式エンコーダについてご紹介しました。今回は、同社が提供する工業用の「TILTIX 傾斜計」【★写真1】について触れたいと思います。

【★写真1】無人搬送車、建機、医療、太陽光パメルなど、幅広い分野で活用される工業用のTILTIX 傾斜計。

工業用傾斜計とは、システムの傾斜角を正確に測定するためのセンサです。さまざまな位置制御システムにとって、傾斜角を把握することは、安全性を確保するうえで非常に重要なファクターのひとつになります。TILTIX傾斜計の特徴は、機械的な接触なしに、簡単かつ効率のよい測定が可能なことです。また重環境向けの頑丈な設計で、どのような場所でも取り付けられるという使いやすさもメリットといえるでしょう。

たとえば、工場内で使われるフォークリフトや無人搬送車(AGV)は、荷物を運ぶために安全性が最重要課題です。そこでフォークの傾斜と高さの監視が求められ、TILTIX傾斜計が導入されています。また、太陽光発電の効率を高める太陽追尾システムにもTILTIX傾斜計が使われています。これは太陽電池パネルの向きを最適化するものです。

長いブームを載せたポンプ消防車やコンクリートポンプ車は、ビルの高層階まで移動しなければなりません。決められた位置まで到達するのに、大きな障害物を乗り越える必要もあります。そこでブームの基準と角度を確認するために、TILTIX傾斜計を活用します。同様にパンタアーム式テーブル昇降装置(シザーリフト)でも、位置ずれを防止する監視用として2軸の傾斜計が活躍します。

もちろんヘルスケア業界でも、MRやCTスキャナといった最新の医療機器で、正確な位置決めや角度の把握が求められます。コンパクトなTILTIX傾斜計は、スキャナの角度位置調整用として、正確な角度を追跡し、正確な測定出力と長寿命を保証しています。

このように、さまざまな用途に利用できるTILTIX傾斜計ですが、詳しくみるといくつかの技術に大別できます。今回は基本となる構造の傾斜計の原理について解説します。
TILTIX傾斜計は、高精度な液体電池技術や、いわゆるMEMS加速度計(Micro Electro Mechanical System:微小電気機械システム)が採用されています。

まず電解液タイプですが、これは【★写真2】のように、センサが電解液で満たされています。壁は電極で覆われ、センサが傾くにつれ、電極を覆う液体のレベルが変化します。そのため2つの電極間の伝導性が上昇、または下降することになります。ここで電極間の伝導性を測定すれば、傾斜角を計算できるという原理です。液体電池の傾斜角の計測範囲は±30°で、測定精度は0.01°と非常に高いです。傾けたときに液体が自然減衰することにより、精度や安定性も確保されますが、測定時は液面が静定している必要があります。

【★写真2】電解液タイプの傾斜計の原理。電極を覆う液体のレベルが変化すると、電極間の伝導性も変わる。この伝導性を測定すれば、傾斜角が求められる。

また傾斜計にはMEMSデバイスを採用したタイプもあります【★写真3】。これは可動式支柱構造体とマイクロマス(小さな質量)とバネで構成されています。傾斜計が傾くと、支持構造体も傾き、マイクロマスに加速度が発生し、その位置がズレます。このときマイクロマスと支持構造体の間で、静電容量の変化が生じるため、その変化をとらえて、傾斜角に換算するという原理です。

【★写真3】MEMSデバイスを採用した傾斜計の原理。バネで支えられたマイクロマスの動き(静電容量)を計測して傾斜を求める。

TILTIX傾斜計には、1軸タイプと2軸タイプがあり、これらの測定範囲は1軸の場合は360°で、2軸の場合は±80°(160°)になっています。それぞれ分解能は0.01°、精度は0.1°と、かなり精密な計測が可能です。ただし少し弱い点もあります。この精度は、あくまで振動がない静的システムで保証されるもので、外部の振動などが発生する環境では、その影響を受けてしまうのです。

前出のようにMEMSデバイスを採用したTILTIX傾斜計は、原理上ではバネで支えられたマイクロマスの動き(静電容量)を計測するものです。計測の際に、センサを取り付けた装置が急激な動きや振動を起こすと、その加速度や外乱が計測値に含まれて、誤差として乗ってしまうのです。これらの問題を解決するために開発されたのが「ダイナミックロード補償機能付き傾斜計」という製品です。次回はこの製品について紹介しましょう。

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