2019 .9.3

LORD MicroStrain社の特殊センサ

ユニークな特殊センサを開発するLORD MicroStrain社とは一体どんな会社?

今回から、ケーメックスが取り扱っているLORD MicroStrain社の特殊センサについてご紹介したいと思います。これまで本コラムではLORD MicroStrain社について触れて来ませんでしたので、あらためて概要についてご説明したいと思います。

LORD MicroStrain社は、もともと大学の医学教授が研究用のアナログ変位センサなどを開発するため創業したMicroStrain社が母体となっています。超小型コントローラを用いて、複数のセンサをまとめて制御する技術に強みをもち、複合計測システムのパイオニアとして、航空宇宙業界を中心に20年以上の実績を積み重ねてきました。
2012年に、1924年に米国ノースカロライナ州で設立され、振動制御技術をコアとし、部品から化学品まで幅広い製品を開発・販売しているグローバルカンパニー、LORD社がMicroStrain社を買収し、センシングシステムの製品ラインナップを拡充させています。

同社の顧客は誰もが知るような名だたる大企業が軒をつらねています。たとえばGE、Ford、CAT、インテル、IBM、Google、Amazon、NASA、米海軍など、その業種も多岐にわたっています【★写真1】。

【★写真1】LORD MicroStrain社のユーザーには、
日本で誰もが知っているような有名なグローバルメーカーや、先進的な技術を有する企業・団体が多い。

主な製品は「無線センシングシステム」および、「複合ジャイロ/イナーシャセンサ」(姿勢方位位置計測センサ)、「超小型・高解像度変位センサ」に大別され、いずれも他社にない非常にユニークな特徴があります。弊社では、これらの製品のうち、無線センシングシステムと複合ジャイロ/イナーシャセンサを中心に取り扱っています【★写真2】。

【★写真2】ケーメックスが取り扱う主要なLORD MicroStrain社の製品は、無線センサシステムとIMU。

ユニークな特殊センサを開発するLORD MicroStrain社とは一体どんな会社?

今回は無線センシングシステムについてご説明しましょう。これまでもセンサデータを無線で飛ばすような技術はありましたが、LORD MicroStrain社の凄いところは、なんといってもサンプリングレート4096kHz、すなわち1秒間に4096回のセンサデータを無線で飛ばして収集できることです。これは他のメーカーにはない差別化された大きな特徴といえるでしょう。

【★写真3】無線センサシステムの構成。センサ、ノード、ゲートウェイ、クラウドプラットフォーム。
ノードとゲートウェイ間は、独自の通信プロトコル「LERS」を採用。

無線センシングシステムは、【★写真3】のように、センサとノード、ゲートウェイ、クラウドプラットフォームから構成されており、計測から遠隔データの収集/分析環境までを一括でサポートしてくれます。

ノードとゲートウェイ間は、独自の通信プロトコルである「LXRS」を採用しており、長距離かつ低消費電力での通信が可能で、内蔵電池で利用することができます。さらにデータのバッファリング機能を有しているため、もし無線が一時的に切れたとしても、3秒から4秒ほどデータを溜め込んで補完できるので、安心してデータを収集できます。

収集データには、加速度、高速加速度、ひずみ/電圧、温度、トルクについて計測可能なノードを用意しています【★写真4】。これらのノードは、ねじ穴付きで製品に組込で使える「量産/組込み型」、ゲートウェイも込み込みで簡単に評価できる「パッケージ型」、環境の悪い場所でも使える「耐環境保護型」が用意されています【★写真5】。また、日本、米国(FCC)、カナダ(IC)、欧州(CE)など、グローバルでの認証規格も取得しています。

【★写真4】無線センサシステム製品は「量産仕様」「パッケージ仕様」「耐環境仕様」の3種からチョイスできる。

【★写真5】各種ノードとゲートウェイの型式の詳細は表のとおり。用途に合わせて選択できる。

システムを使う際も事前にAPIが用意されているので、エンジニアであれば、それほど難しいということもありません。C++などで簡単なプログラムを組み、APIを叩くだけで、生データをPCに取り込むことができます。

実は国内で、すでにこの無線センサシステムの導入が進んでいます。たとえば、某大手メーカーでは、ケーブルが引き回せないようなモビリティ環境において適用が検討されています。振動やひずみなどのデータをリアルタイムで取集するために、ワイヤレスで高精度かつ高解像度な計測が可能な本製品が選ばれました。このコラムをご覧になって、ご興味のある方は、ぜひ弊社の担当までご連絡ください。

次回は、カルマンフィルタを内蔵した超小型のIMU製品についてご紹介したいと思います。これも大変ユニークな製品なので、ご期待ください。