2024 .9.3

ケーメックスONEオリジナル!AGV/AMR現場の声から生まれた「折れないアンテナ」KS-ANT-CSP01

 

深刻な人手不足によって、製造業や物流においてAGV/AMRの重要性は増しています。ドローンやAMR、協働ロボットというとAIや画像処理技術に目が行きがちですが、地味に重要な技術に無線通信があります。その中でもアンテナはさらに脇役的な存在ですが、制御の信頼性や効率、ひいてはコストダウンにもかかわる重要な部品です。アンテナは枯れた技術にも見えますが、さまざまな工夫によって付加価値を高める要素があります。

 

ケーメックスONEの新製品「KS-ANT-CSP01」は、自動車メーカーや物流倉庫などのAGV/AMRの現場の声から生まれた2GHz帯と5GHz帯に対応したオリジナルアンテナです。どんな製品でどんな特長があるか、開発に携わった弊社の前澤に話を聞きました。

 

――早速ですがAGVやAMRに最適という新製品のKS-ANT-CSP01についてどんなアンテナでどんな特長があるのかからお聞きしてよいですか?

 

前澤:見た目の特徴は、アクセスポイントや無線モジュールによくある棒状のダイポール型アンテナではなく、小さい箱型のモノポールアンテナであることです【★写真1】。2.4GHz帯と5GHz帯(IEEE802.11/b/g/n/ac/ax)に対応しています。外形寸法は52mm×65mm、厚さが20mm、重さは50gほどと、かなりコンパクトなサイズにしました。台座はマグネットになっていますので、金属面ならどこにでも取り付けることができます。カバーで隠していますが、ねじ止め用の穴も2か所開いていますので、ねじ止めも可能です。

 

【★写真1】ケーメックスONEオリジナルの2周波共用モノポール型アンテナ「KS-ANT-CSP01」。52mm x 65mmと非常にコンパクト。

 

――設計や開発にあたって、こだわった点や苦労した点はありますか?

 

前澤:アンテナの基本性能もそうですが、安定した通信と信頼性のため出力(電波の到達距離)より、指向性にこだわりました。この形状からは想像しづらいかもしれませんが、【図1】のような全方位に向いた指向性になるよう製品設計を行いました。誤操作や接触を避けるためにアクセスポイントが高い位置につきやすい工場や物流現場で床面を走行しているAGV/AMRが、いかに電波を拾えるようにするかがコンセプトになっています。

 

【図1】KS-ANT-CSP01の電波特性 (周波数 2,400MHz)

 

――指向性や利得を制御するにはアンテナ素子を複数使う方法もありますが、箱型とした理由を教えてください。

 

前澤:ダイポールアンテナだと、水平方向には強いのですが、垂直方向の伝播が弱いという特性があります。棒状のアンテナは、アクセスポイントや本体のアンテナ位置が制約されてしまうので、あまり良くありません。そもそもこのアンテナを作ろうと思った動機でもありますが、弊社で扱っている無線モジュールはアンテナが外付けタイプでダイポールアンテナを取り付けるものがほとんどでした。しかし、AGVなどの用途では、アンテナのような突起物があるのは好ましくありません。よくあるトラブルとして、アンテナが折れてしまうことがあります。また、折れないように車体下部やでっぱりのないところにアンテナを取り付けると、車両の位置によって電波が弱く、走行中に停止してしまうという問題も起きます。

 

――アンテナを無線モジュールに内蔵して、突起をなくすこともできたと思います。外付けとした理由も聞かせてください。

 

前澤:Moxaのラインナップにはありませんが、市場にはアンテナを内蔵したでっぱりのない無線モジュールもあります。しかし、やはりアンテナを筐体の中に設置すると欲しい性能が得られず、通信エラーや電波が届きにくいといったことが発生します。アクセスポイントはそれなりの密度で展開しており、穴はないはずなのに、いつも同じ場所で止まっていたり、エラーが起きやすい場所があるというのは、よく聞くトラブルです。

 

――工場や倉庫のあるあるですね。内蔵アンテナではなく、外付けタイプでモノポール型アンテナを開発したのは、それらの問題に対応するためなんですね。

 

前澤:はい。アンテナと無線モジュールは中継ケーブルを継ぎ足すこともできます。本体、アンテナを最適な位置に設置できます。無人の配送システムやAMRの設計をする側にとって、これはメリットになります。

 

――さきほど、アンテナが折れるなど、実際のトラブルや問題が開発のきっかけとしていましたが、そういった現場にはよく行かれるのでしょうか。

 

前澤:フィールドエンジニアとして、大手自動車メーカーの工場、物流倉庫などいろいろなところに出入りさせていただいています。小型で取り付け場所を選ばず、突起物がない電波特性も良いアンテナという発想は、まさに現場の声と自分自身が現場に足を運んで感じたことで生まれました。

 

――KS-ANT-CSP01の出荷が始まって、市場の反応はどうでしたか。

 

前澤:すでにAMRに実装され現場で稼働しているものもあります。7月からの販売なのですが、最初に用意した50個はすぐに完売しました。追加で製造していますが、バックオーダーをかかえるような状況です。

 

外付けアンテナなので、無線モジュールにコネクタが出ているタイプなら、稼働中のシステムでもアンテナ部分だけ交換することもできます。新しいアンテナに変更したら、以前は不具合が出ていた場所が改善されたという声も聞きます。実のところ、KS-ANT-CSP01は、ダイポールアンテナよりも出力が落ちます。到達範囲は100m前後とダイポール型より少し狭くなるのですが、360度全方向に指向性がとれることで、システムとしての性能が改善されるようです。

 

モノポール型のアンテナのメリットは、車両側だけでなく親機にも言えるようです。親機はだいたい地上から3mくらいの位置に設置されることが多いのですが、ダイポールアンテナの場合、下方向の特性があまり良くありません。アンテナの角度を変えても、天井やその他の反射が増えるという悪影響が出ます。現在、これを改善できる下方向に強い親機用のアンテナも開発しています。

 

――不具合が出なくなる、車両が止まらないというのは現場では大きいですね。

 

前澤:無線モジュールの出力やアンテナ単体の出力に目が行きがちですが、製造工場では近い間隔でアクセスポイントが設置されるケースが多いので、出力よりも指向性でまんべんなくカバーできる方が良い場合があります。

 

――用途や採用実績としては、AGV/AMR、自動車工場や物流倉庫とのことですが、今後の展開や他の分野への応用は可能でしょうか?

 

前澤:移動体通信の需要はたくさんあり、今後もこういったアンテナも含めた無線の提案は増えていくと思います。

 

――屋外利用も問題ないですか?

 

前澤:はい、規格上問題ありません。実際に、フォークリフトの制御や、工場内で建屋をまたいだ部品の配送などでも使用されています。

 

――なるほど。部品としての設計の自由度が高く、動画も扱えるとなると、ロボットなどハイエンドなアプリケーションにも応用ができそうですね。本日はありがとうございました。

 

ケーメックスONEのオリジナルアンテナKS-ANT-CSP01にご興味をお持ちの方は、弊社までお気軽にお問い合わせください。また、2024年9月10日~13日に東京ビッグサイトで開催される国際物流展総合展でも展示予定です。ご来場の際は、是非弊社ブース(東展示棟、ブースNo. 1-508)までお立ち寄りいただき、実物をご覧ください。国際物流総合展2024公式サイトはこちらをご覧ください。

 

コラムで紹介されている製品はこちら

ケーメックスONE – 無指向性フラットアンテナ KS-ANT-CSP01