2018 .2.5
産業用コネクタ市場の動向から予測!今後求められる要素技術とは何か?(その5)
電機信号だけじゃない!空気や液体も流せるODU社コネクタ
今回は、食品業界の動向と食品業界で求められる特殊コネクタについて考察したいと思います。
近年、国内ではコンビニエンスストアやスーパーマーケット、あるいは外食チェーン向けの食料品を中心に、品質の向上を目的とした設備投資の需要が伸びています。また製菓や米飯・惣菜などをパッケージングする機械システムも増加しています。最近では海外でも日本食ブームが起き、北米およびアジア地域において、賞味期限の長い冷凍食品の製造設備のニーズも高まりつつあります。
しかし、その一方で人手不足が深刻化し、人件費の高騰が起きており、ますます省人・自動化の流れが加速していることもご存じかと思います。さらに高品質、安心・安全な商品を求める消費者の声も高まっており、引き続き自動化設備の投資は堅調に推移していくものと予想されています。そのような状況で、食品の自動化機械に求められるコネクタの需要も同時に伸びている背景があります。
食品現場での衛生面を考える際に、ロボットのような機械で自動化を推し進める要因が考えられます。まず「人が汚染源になることを防ぐ」ということです。一時期、社会的に大きく取り上げられたO157の問題。これは腸管内で毒素を作る腸管出血性大腸菌と呼ばれるもので、法定伝染病として指定されています。O157は人が感染源となり、少しの菌が口から体内に入るだけでも大腸で増殖してしまいます。そのため人が汚染源にならないように、できるだけ食品業界でも自動化が推奨されているのです。
次に「人が犯すミスを防止する」ということも自動化に置き換えられる要因のひとつでしょう。たとえば弁当に惣菜を入れる際に、人が手作業でパッキングすると、入れ間違いが起きることもあります。こういった作業は、現在ほとんど人手で行うことも多いのですが、今後はロボットによるピック&プレース作業も進んでいくと予想されます。最近では、ピック&プレースでの起動生成をAIが担当したり、オニギリのような柔らかい食品でも、形を崩さずに整列できるようなロボットが登場しています。
また最も怖いのが、テロのような「悪意ある異物の混入」が起きる可能性も否定できない点でしょう。だいぶ前の話になりますが、会社に恨みをもった契約社員が、冷凍食品に農薬(殺虫剤)を混入するという事件が起きてしまいました。こういったことを引き起こさないようにするためにも、まずます自動化が求められるようになるっていくでしょう
では、食品業界で自動化を進める際に利用されるコネクタには一体どのようなものがあるのでしょうか? まず食品を加工する場合は、煮たり、焼いたりすることが基本です。火力を使う場合もありますが、安全面の配慮からIHクッキングヒータのように、大電流を流して調理するケースも出てきます。
そうなると、大電流に対応できるようなコネクタが必要になります。以前のコラムでも「大電流用コネクタ」の話をさせていただきましたが、コネクタに大電流を流す場合には、コネクタ同士が勘合する際の接触面積と、その接触抵抗が重要なポイントになります。
つまり接触面積が大きいほど、大電流に対応できるのです。また接触抵抗は小さいほど良いとされています。なぜなら接触抵抗が大きくなると、そこで熱が発生し、効率が落ちてしまうからです(本来、発熱させるべき場所での発熱量が減る)。そこでODU独自の。<「スプリングワイヤー・コンタクト構造」【★写真1】が利いてくるのです。
【★写真1】円周上にスプリングワイヤーが配置され、ピン接点に対して常に均等に押し付けられるため、振動や衝撃に強く、安定した接触状態を保てる。また長期間にわたり接触抵抗を低減できる。
復習になりますが、スプリングワイヤー・コンタクトは、振動や衝撃に対しても強く、安定した接触状態を保ちます。また長期間にわたり、接触抵抗を低減できます。多数の接触ポイントがあるため、接触抵抗はμΩレベルと低く、多数の接触ポイントから大電流を分散して流せるメリットがあるのです。
またスプリングワイヤー・コンタクトは、自動着脱で10万回以上という超長寿命を達成している点も特筆すべき点でしょう。食品業界では、ロボットによってピッキングする際に、エンドエフェクタ部にあたる治具(ツール)の切り替えにも利用できるのです。こういったツールを高速に着脱する際には、何度か紹介したODUのa href=”https://kmecsone.jp/article/column_04/” target=”_blank” rel=”noopener noreferrer”>「MACシリーズ」【★写真2】が最適です。もちろん、こちらの製品にも前出のスプリングワイヤー・コンタクトが採用されています。
【★写真2】ODUの「MACシリーズ」。レゴブロックのように組み合わせ自在という特徴と、スプリングワイヤー・コンタクトを採用している点が大きな特徴だ。今後は食品業界にも使われるようになるだろう。
MACシリーズは、レゴブロックのように、いろいろなピンを柔軟に組み合わせられるのですが、ピン(電気)だけでなく、流体にも対応している点が大きな特徴です。食品業界では、空気、水、その他の液体などを利用するシーンも多いと思います。MACシリーズならば、衛生の観点から、将来的に洗浄のために水を流すことも容易に対応できるでしょう。さらに食品に使う液体(食材)そのものを注入する作業にも応用が利くと思います。
このように、食品業界における自動化の一助を担うべく、今後はODUのコネクタが活躍する場を広げていくのではないかと期待しています。