2025 .10.28

効率だけでなく信頼性を最大化するEtherCATネットワークの構築

 

よりスマートで自動化された産業オペレーションの実現において、マイクロ秒単位の時間が重要となります。ロボット工学や包装、半導体などの産業分野で高精度および高速化、同期化への要求が高まる中、EtherCATは高性能モーション制御の規格として採用されています。その独自の「オンザフライ」処理原理により、従来の産業用イーサネットプロトコルでは実現できなかった決定論的な高速通信を実現します。

 

もしかすると、これらのメリットについてはご存知で、既にEtherCATを採用されているかもしれません。しかし、産業システムが複雑化するにつれ、最も一般的なネットワークトポロジーに潜む脆弱性が、運用を脅かす可能性があります。

 

チェーンの弱点

簡素化とコストの効率化のため、多くのEtherCATネットワークはデイジーチェーン (またはライン)トポロジーで構築されます。複数のデバイスが単純な直線状のチェーンで相互接続される構成ですが、この設計には重大な単一障害点があります。

 

延長コードがつながったものを想像してみてください。1本の延長コードのプラグを抜くと、そこに繋がっている他の延長コードも電源を失います。産業環境では、さまざまな事態が発生する可能性があります。チェーン内のノードに障害が発生したり、ケーブルが破損したり、チェーンのどこかで接続が切れたりすると、チェーンの下流にある全てのデバイスが即座にマスタへの接続を失うことになります。これにより、生産ラインの一部が停止し、生産性の低下やコストを生むダウンタイム、複雑なトラブルシューティングなどの問題を引き起こす可能性があります。チェーンに追加するデバイスが増えるほど、このような事態が発生するリスクは高まります。

 

脆弱なチェーンからレジリエンスが高いネットワークアーキテクチャへ

では、最も単純で最も脆弱なトポロジーに縛られることなく、EtherCAT技術のメリットを最大限に活用するにはどうしたらよいでしょうか?その答えは、異なるトポロジーを用いて、より耐障害性の高いネットワークストラクチャを構築することにあります。EtherCATはツリー型やスター型など複数のトポロジーをサポートしています。これらのトポロジーが、より堅牢なEtherCATネットワークの構築にどのように役立つか見てみましょう。

 

 

ツリー型トポロジーでは、単一のラインではなく、EtherCATジャンクションを分岐点として使用します。マスタはジャンクションに接続し、ジャンクションは複数の分岐ポートを提供します。各ポートは個別のスレーブデバイスに接続することができます。また、より一般的な方法としては、それ自体のより小さなデイジーチェーンセグメント (ブランチ)に接続することもできます。これにより、マスタを根、ジャンクションを主枝、デバイスセグメントを小枝とするツリー構造が形成されます。一方、スター型トポロジーは、ツリー型トポロジーのシンプルにしたものであり、分岐レベルが1つのみの構造です。1つのブランチでデバイスやケーブルの障害が発生しても、他のブランチには影響しません。この柔軟なトポロジー設計には、以下の3つのメリットがあります。

 

障害の隔離: 障害は単一のセグメント内に封じ込められ、トポロジー全体にわたる壊滅的なシャットダウンを防止します。

トラブルシューティングの簡素化: 技術者は障害が発生したセグメントを正確かつ迅速に特定でき、平均修復時間 (MTTR)を大幅に短縮することができます。

柔軟な拡張: 既存のネットワークを中断することなく、新しいデバイスやマシンモジュール全体を使用してトポロジーを拡張することが可能です。

 

産業の抱える課題

半導体製造とリチウムイオン電池製造という2つの実例を見てみましょう。どちらのアプリケーションも、EtherCATを使用してリアルタイムのモーション制御と精密な生産を実現しています。このような繊細なアプリケーションでは、システムのダウンタイムは許されず、シームレスなEtherCAT通信を維持するための信頼性の高い接続が求められます。

 

半導体装置製造

半導体製造において、EtherCATプロトコルは主流技術となりつつあります。PECVD装置を例にとると、スペースに限りがありノイズの多い環境下で新しいデバイスを追加することは困難です。装置は複数のセンサ、圧力計および電力制御装置を接続する必要があるため、マシンメーカーは、将来の拡張性も考慮しつつ、干渉に強い複数のポートを備えたコンパクトなEtherCAT製品を求めています。

 

 

リチウムイオン電池製造

リチウムイオン電池製造装置では、何百台ものEtherCATスレーブデバイスを複数のネットワークセグメントに分割することも珍しくありません。同時に、メーカーは、停電やシステムが不安定な時にも正常なオペレーションを維持する必要があります。また、異なるベンダーのEtherCATデバイスを使用することが多いため、相互運用性も重要な項目です。そのため、異なるベンダーのEtherCATデバイスとの互換性がテスト済みのデバイスを評価および選択することが大切です。これにより、既存のトポロジーにこれらのデバイスを導入する際の統合がスムーズになります。

 

 

信頼性を追求した設計

堅牢で柔軟なトポロジーを実現するには、産業用エッジ向けに特別に設計されたハードウェアが必要です。Moxaの産業用EtherCATジャンクションEJS-04シリーズEJS-08シリーズは、高性能ネットワークの中核を担うよう設計されています。堅牢でコンパクトなEJSシリーズは、最大限のアップタイムと運用の回復力を実現し、現代の自動化のニーズに応える耐障害性と適応性に優れたEtherCATネットワークアーキテクチャを構築するために必要な柔軟性を提供します。

 

EtherCATネットワークを強化するには?

EtherCATデイジーチェーントポロジーを使用している場合、固有のリスクを軽減する方法を理解することが、運用効率向上の重要なステップとなります。詳細は是非、弊社までお問い合わせください。また、MoxaではEtherCATジャンクションを用いたより堅牢なネットワークアーキテクチャを実装する方法を解説したTech Noteをご用意していますので、こちらよりご覧ください。※Moxaの英語サイトにアクセスします。

 

コラムで紹介されている製品はこちら

4ポート 産業用EtherCATジャンクションEJS-04シリーズ

 

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4ポート 産業用EtherCATジャンクションEJS-08シリーズ

 

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