2022 .10.21

PoE(Power over Ethernet)を産業用システムへ導入する前に考慮すべき5つの重要項目

 

デバイスを産業用システムに接続したり、IPカメラやワイヤレスアクセスポイントなどのPD(受電デバイス)に大量の電力を供給しながらデータを転送したりする際に、課題に直面したことはありませんか?PoE(Power over Ethernet)は、ケーブルを利用してPSE(給電機器)経由で電力を伝送する電源メカニズムです。PoEには、コストと時間の節約や高い柔軟性というメリットがあります。例えば、全てのエンドポイントに電源コンセントを新しく設置する必要がないため、電源設備にかかる時間とコストを削減できます。さらに、PSEを使用することで、固定された電源コンセントに接続する必要がなくなります。PDの設置や、PoEなどのPSEへの接続は簡単に行えます。将来、変更や拡張が必要になった場合、固定された電源コンセントを使用するよりも、PSEを再配置する方が格段に容易です。

 

しかし、より高解像度のIPカメラやより多くのデバイスに接続するワイヤレスアクセスポイントへの市場の需要が高まっており、現在の主流である15もしくは30WのPoEは、もはや十分とは言えません。さらに、PSEとPDが互いに互換性があるか確認するには時間がかかり、エンジニアが喜んで引き受ける仕事ではありません。

 

 

このコラムでは、産業用システムのライフサイクルに焦点を当て、直面する可能性の高い重要な問題に対する答えをご紹介していきます。最後までお読みいただくと、PoEソリューションを用いた産業用システムの導入方法について、より理解を深めることができます。

 

 

購入前 – 評価

 

疑問1: IPカメラなど電力を大量に消費するPDに対応するPoE規格は何か?

IPカメラを購入した際、どのPoEスイッチがIPカメラに対応するか判断が難しいと感じたことはありませんか?将来的な問題を回避するには、産業用システムの開発時に、PSE(例: PoEスイッチ)とPD(例: IPカメラ)の互換性を適切に考慮することが重要です。

 

2003年にIEEE 802.3af PoE規格が導入されるとすぐ、エンジニアはそのメリットを認識し、現場に展開されるPoEスイッチの数は着実に増えてきました。しかし、デバイスが進化し、物体検出やライトスキャンなど新しい機能を備え、複雑になると、より多くの電力が必要になりました。メーカーは、より高い出力をサポートする独自のプロトコルを作ることでこの傾向に対応してきましたが、PDとPSE間の互換性の問題が生じるという意図せぬ影響が出てきました。システム全体を計画しネットワークを選定する際に、これらの潜在的な問題も考慮する必要があります。相互運用性は、電圧を検出し、電力容量を監視できるツールで試験可能です。IEEE 802.3 at/af/bt規格に準拠するPDとPSEを選択するか、Sifosなどのツールやソフトウェアでデバイスを試験し、デバイスを現場に導入する前に互換性を確認しておくことを強くお薦めします。

 

疑問2: 帯域幅が十分か確認する最良の方法は何か?

ネットワークは稼働しているものの、データパケットが遅延しているため、IPカメラからの映像が適切に送信されないという状況に遭遇したことはありますか?産業用途として導入される場合、その多くで、リアルタイムで高画質のスナップショットもしくはビデオストリームをコントロールセンターへ送信することが求められ、必要な帯域幅の量が急増することがあります。

 

したがって、4KもしくはUHDカメラで撮影された高画質映像を、品質の低下や映像の損失なしに確実に供給するためには、PoEスイッチが十分な帯域幅を利用できるか確認する必要があります。フルギガビットのPoEスイッチはこの要件を確実に満たすことができますが、非常に高額である可能性があります。理想的なソリューションは、ギガビットまたは2.5 GbEポートを組み合わせたPoEスイッチを利用することで、高価なオプションを利用せずともネットワークの柔軟性を向上させることができます。

 

 

購入後 – 導入

 

疑問3: 各PDの消費電力要件に関する情報なしに、ネットワーク上でPoEデバイスを確実にセットアップする方法は何か?

IPカメラなどの受電デバイスのPoE消費電力を確認し、それに合わせてPoEスイッチを設定しなければならない状況を経験したことはありますか?これは少々面倒であるため、簡略化できる代替ソリューションを検討しましょう。

 

よく起こるのが、IEEE 802.3bt 90 W出力までをサポートするPoEスイッチを使用したいが、ワイヤレスアクセスポイントやIPカメラなどの受電デバイスが15 Wから90 Wの電力を使用するケースです。近年では、技術の進歩によりこの問題を回避することができるようになりました。例えば、受電デバイスの消費電力を自動検出できるPoEスイッチを利用すれば、PDのパラメータをWeb GUIに入力する必要がありません。自動的に消費電力を検出する機能で設定と導入を簡略化できることは、業界で広く認知されています。

 

 

購入後 – メンテナンス

 

疑問 4: リモートで導入されたPDの問題を判断する最善の方法は何か?

お客様のIPカメラの1つが正しく機能しておらず、問題を即座に解決しなければならない状況に遭遇したことはありますか? IPカメラは何百kmも離れた場所に設置されることが多く、アセットオーナーは、問題が解決できる確信がない限り、現場にエンジニアを向かわせることを躊躇います。この状況で必要とされるのは、問題に関する詳細な情報です。

 

通常、産業用アプリケーションは遠隔地の厳しい環境下に設置されるため、PoEスイッチが故障チェックを実行し、リモートでPDを自動的に再起動するのが理想的です。これにより、アセットオーナーは現場で何が起きているか、より詳細な情報を得ることができ、人員を派遣する必要がある場合には、状況を迅速に改善するための適切な機器を持参することができます。これを実現する最も効率的な方法の1つは、E-mail、リレーもしくはトラップ通知を設定し、PDのステータスに関する情報を入手することです。さらに、管理ソフトウェアを使用すると、遠隔地のデバイスにどのような問題が発生しているか簡単に判断することができるので、デバイスが故障した原因のインサイトを入手することをお薦めします。これにより、現場に人員を派遣する前に、より多くの情報に基づいた決断を下すことができます。

 

疑問5: ネットワークデバイスのセキュリティを強化するために必要なステップは何か?

IP監視システムがクローズドループにあり、エアギャップを備えていれば、サイバーセキュリティの脅威から保護されていると信じていますか?残念ながら、これは正しくありません。実際に、自社のシステムは安全だと確信していた企業のネットワークが不正アクセスを受け、ビデオ映像が流出したというニュースが報道されることがあります。

 

堅牢で信頼性の高いネットワークの構築には、産業用ネットワークセキュリティが必要です。現代の産業環境では、これを実現するオプションがいくつか存在します。お薦めの方法は、安全なネットワークインフラストラクチャの確立に役立つ、セキュアバイデザインの構成要素を利用することです。産業用ネットワークセキュリティを大幅に強化するHTTPS/SSLやSSH、RADIUS、TACACS+などのセキュリティ機能を搭載したPoEスイッチを選択してください。また、適切な脆弱性管理プロセスを備えたベンダを選択することを強くお薦めします。そうすることで、脆弱性が報告された場合でも適切な緩和策と通信を得ることができ、導入期間全体を通してシステムの安全性を確保することができます。

 

お客様の声: IP監視イノベーターが製品を強化する方法

「お客様が抱える最も一般的な課題には、他のネットワークデバイス用PoE++インジェクタからのイーサネットポート接続の不足、データ管理用のレイヤ2ネットワーク管理機能の欠如、リモートPoE++カメラのパフォーマンスの可視性の欠如、高度な診断に利用可能なツールの欠如などがあります。多くの場合、お客様は問題解決のためにエンジニアをリモートサイトへ派遣したり、カメラを物理的にリセットしなければなりません。」と世界的なビデオ監視システムのイノベーターであるWireless Technology, Inc.の営業部長 Lester Miyasaki氏は述べています。「MoxaのPoE++対応12ポートレイヤ2マネージドスイッチEDS-G4012-8P-4QGSFP-LVA-Tには非常に感銘を受けました。まず、カメラに接続されると、自動検出機能によりPoE++カメラのタイプとクラスをスイッチのWeb GUIに報告します。次に、直感的で使い易いWeb GUIにより、電力バジェットや消費を含むPoE++設定を管理でき、必要であればデータをエクスポートし、さらに分析することも可能です。また、PoE++ポートパワーリサイクルという非常に有用な機能により、お客様は人員をリモートサイトへ派遣する頻度を減らすことができ、生産性を向上させることができます。」

 

最後に

産業を取り巻く環境は常に変化し、お客様のネットワークに関する要望は高まる一方です。このニーズに応える実績のあるソリューションは最適な選択肢といえるでしょう。MoxaのイーサネットスイッチEDS-4008EDS-4012およびEDS-G4012には最大8つのIEEE 802.3bt PoEポートを備え、ポートあたり最大90 Wの出力に対応するモデルがあります。MoxaのEDS-4000/G4000シリーズのPoEスイッチは、全てのPSEポートがIEEE 802.3at、IEEE 802.3btおよび安全性と相互運用性に関する産業標準要件を満たすことを保証するSifos PoEテストに合格しています。Moxaの包括的な製品ポートフォリオは、高速イーサネットやギガビット、2.5 GbEなどの様々なポートの組み合わせに対応し、産業用ネットワークの柔軟な導入に貢献します。また、EDS-4000/G4000シリーズは自動PoE検出機能と故障チェック機能を備えているため、システムの迅速なセットアップと維持に役立ちます。Moxaのソリューションに興味をお持ちの方は、お気軽に弊社までお問合せください。

 

コラムで紹介されている製品はこちら

Moxa EDS-4000シリーズ EDS-4008シリーズ
EDS-4009シリーズ
EDS-4012シリーズ
EDS-4014シリーズ
PoE対応
10/100 FE 最大8ポート 最大9ポート 8ポート 8ポート
GbE 最大2ポート 最大3ポート 4ポート 4ポート
2.5 GbE 2ポート
90W PoEポート 最大4ポート 最大8ポート

 

Moxa EDS-G4000シリーズ EDS-G4008シリーズ
EDS-G4012シリーズ
EDS-G4014シリーズ
PoE対応
10/100 FE
GbE 8ポート 最大12ポート 8ポート
2.5 GbE 最大4ポート 6ポート
90W PoEポート 最大8ポート

 

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