2022 .7.5
IoT、AIおよびブロックチェーンによる再生可能エネルギー産業の変革
エネルギー産業がサブスクリプションや共有経済ビジネスモデルを基に運営される日が来ると想像できますか?再生可能エネルギーの大きな発展およびIoTやAIなどの破壊的技術の成熟によって、この変革は既に始まっています。REN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)のRenewables 2019 Global Status Reportによると、再生可能エネルギーは世界の主な発電源になると予測されています。再生可能エネルギーの設備容量は1,246 GWに達し、現在世界で生成されている全エネルギーの26%を占めます。IoTやAI、ブロックチェーンを活用することで、再生可能エネルギーは従来の電力供給網を改革し、世界の主要な電力源へと成長しています。
セルラーIoTが作り出す電力供給者と消費者のための新しく柔軟なビジネスモデル
1990年代、オーストラリアはエネルギーの自由化を推進し始めました。現在のオーストラリアでは、エネルギーIoTの発展により消費者が電気事業者を自分で選択することができます。そのため、電力供給者と消費者間のより柔軟なエネルギー供給契約が可能となり、エネルギーパッケージやサブスクリプションといった新しいビジネスモデルが生み出されています。
例えば、オーストラリアのオンライングリーンエネルギー小売業者のPowershopは、セルラーIoT接続を備えたスマートメータを使用し、いつでもメータを確認できます。これにより、Powershopは使用パターンの決定に必要なデータを収集し、ピークに基づいてレートを調整することができます。顧客はモバイルアプリでリアルタイムの電力使用量を確認でき、自身の電力使用量とニーズをより理解することができます。Powershopは電力の事前購入やピーク時の使用量の削減、特定の省エネ要件を満たす場合に割引料金を提供しており、顧客はニーズに合わせてPowershopのエネルギーパッケージを購入できます。スマートメータを利用することでエネルギー使用量を瞬時に正確に確認できるため、Powershopはより環境に優しい電力のグリーンエネルギーパッケージなど、様々なパッケージを顧客に提案できます。
AIを利用したバーチャル発電所が実現するインテリジェントなエネルギー貯蔵と配給
2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、日本では再生可能エネルギーの開発が積極的に推進されるようになりました。2003年から2012年の間、日本の再生可能エネルギーの平均成長率はわずか5-9%でした。しかし、2012年以降、再生可能エネルギーブームが訪れ、平均成長率は26%に達しました。
より多くの再生可能エネルギーが利用できるようになると、東京電力は東芝エネルギーシステムズと提携し、全国に分散している再生可能エネルギー発電所とIoTテクノロジーおよびAIを利用したエネルギー貯蔵システムを連結しました。さらに、2019年には横浜にバーチャル発電所を設立しました。天気予報と過去のエネルギー使用量を基に、AIを用いていつ余剰電力を貯蔵するか決定します。電力需要が増加すると、システムは蓄えたエネルギーをスマートグリッドへ放出します。これにより、化石燃料エネルギーの購入量を削減できるだけでなく、余剰電力を販売することで追加の収入を得ることができます。
スマートテクノロジーとエネルギー貯蔵システムを連結することで、従来の発電所をグリーンエネルギーとバーチャル発電所で補完した例もあります。 従来の発電所に対する需要が増加した場合に、バーチャル発電所はエネルギー貯蔵システムのグリーンエネルギーを供給することができるのです。
ブロックチェーンにより変化する従来のバイヤーとサプライヤの関係
Lition EnergieとLO3 Energyは、それぞれドイツと米国に新設されたエネルギー商社です。この2社は、分散化、透明性、セキュリティといったブロックチェーンのアドバンテージに基づいた信頼できるエネルギー供給および取引プラットフォームを作り出しました。消費者はアグリゲータではなく、より環境に優しくコスト効率の高いプロバイダからエネルギーを購入することができます。ブロックチェーンはトランザクション処理を簡略化し、トレーサビリティおよびセキュリティを提供することでこれを実現します。将来的には、消費者は自宅近くの小さなエネルギープロバイダと契約することも可能です。
現在の課題は、再生可能エネルギーがコストを削減し従来のエネルギープロバイダとの競争力を維持するためには、政府の助成金に頼らざるを得ない点にあります。ドイツでは過去数年間に電気料金が大幅に増加しましたが、主な理由の1つが再生可能エネルギーの追加料金です。これは以前は政府が再生可能エネルギーの開発を支援するために助成していた費用でした。この変化により人々の省エネに対する関心は高まりましたが、電気料金の上昇は生産工程や日常生活の費用の増加をもたらしました。現在では、成熟したスマートテクノロジーを運営に取り入れることで、再生可能エネルギープロバイダはコストを重視する消費者と環境を重視する消費者のどちらとも繋がることができます。
こちらのコラムを読まれた方には、下記の記事もおすすめです。
信頼性の高いIIoTを低予算で実現 | セキュアなIEC 61850ゲートウェイで変電所をレトロフィット |