2017 .1.30

【ツボその4】ノイズ・振動・衝撃などの厳しい環境下で信頼性を向上する

太陽光発電所や変電所などの過酷な環境でも使える耐ノイズ性能

引き続き、MOXA製品の耐環境性について触れたいと思います。今回は、ノイズ耐性と耐振動・衝撃についてお話します。

IIoT(産業用IoT)やIndustrie4.0といったトレンドのなかで、デバイスがインターネットに接続される時代が訪れています。まずインターネットにつなげる前には、デバイスをハブやスイッチで集約しなければなりません。その際に産業現場では、耐ノイズ性がポイントになります。

信号線にノイズがのって誤動作を起こしたり、システムが壊れる可能性を回避するためには、非常に地味ではありますが、耐ノイズ性は重要なファクターになるわけです。

MOXAのイーサネット・スイッチは「IEC61000-4-2(ESD)」で規定されるノイズレベルを保証しています。このIECの規格は<低い湿度環境で、操作者から直接、あるいは近接物体から発生する静電気放電に対する電子機器のイミュニティ評価に適用される規格>です。

本規格では、帯電した人体が金属を手に持ち、電子機器に放電した場合を想定しています。その時に発生する電流波形をシミュレートする回路を用いて試験を行うわけです。

たとえば、MOXAの一般産業用向け製品では、型番の最後に「A」が付く製品、「EDS-405A」のようなものは、最大でIEC61000-4-2で規定される「レベル3」まで対応しています。このレベル3は、試験電圧6kV(接触放電)、および8kV(気中放電)をクリアするものです。


「IEC61000-4-2」で規定されるレベル3までに対応する「405A」。
試験電圧6000V(接触放電)、および8000V(気中放電)をクリア。

さらに一般産業用向けでも、太陽光発電所などで使われるケースでは、インバータなどによって、かなりノイズを受けやすいこともあります。各種センサ類のモニタリング用でも、イーサネットスイッチやハブが使われますが、やはりメタルケーブルであるため、ノイズが乗りやすいのです。

そこでMOXAでは、型番の最後に「E」がつく製品、たとえば「EDS-500Eシリーズ」などが、IEC61000-4-2のレベル4までに対応しています。このレベル4は、試験電圧8kV(接触放電)、および15kV(気中放電)をクリアするものです。


耐環境性に優れたMOXA製品。写真はIndustrial 802.11n Access Pointの「AWK-3131A」。両側面にメタル製のヒートシンクを取り付けて放熱する構造。同時に頑強な構造にもなっている。

もうひとつ、海外規格になりますが「IEC-61850」に対応する製品もご用意しています。グローバルでは、すでに数百ヵ所の変電所が、このIEC-61850に基づいて構築されているのです。

本規格は<変電所内で使われるインテリジェントな電子装置間の情報交換を標準化し、相互運用を行うために制定された規格>です。しかし包括的に電力産業の他領域にも適用できるため、電力系統の運用管理でのグローバルな通信基盤の規格になるだろうという期待もあるようです。もちろん、ここでもノイズ耐性について定められています。

こちらは前出のIEC61000-4よりも、さらに上位の規格になるものです。たとえば変電設備で特別高圧(電気設備基準の送電電圧規格で7000Vを超えるもの)を使うため、非常に高いノイズ耐性が求められます。MOXAでは、このような厳しい環境でも利用できる「PTシリーズ」を用意しています。


「IEC61850」に準拠する「PTシリーズ」。非常に高いノイズ耐性を有する製品群。
変電設備での環境にも耐える。

欧州の鉄道規格である「EN50155」にも適合するMOXA製品

次に耐振動・耐衝撃に関する話題に移りましょう。MOXAのほとんどの製品は、基本的な環境試験規格「IEC60068」の規定をクリアしています。

イーサネット・スイッチやハブは、盤内に取り付けられて稼働するものなので、振動や衝撃を受けないという前提に立っています。ただし、バスや電車内などで、運航情報を示すサイネージや、PIS(Passenger Information System)、監視カメラといったデバイスでは、振動・衝撃に対して配慮が求められます。そこでMOXAでは、欧州の鉄道規格である「EN50155」に適合しているのです。

EN50155は、さまざまな電源状況下で信頼性を担保する環境テスト規格です。具体的には、耐環境テスト(振動・衝撃・温度変化)、EMCテスト(EN50121-3-2、EN50121-4)、安全性テスト(絶縁体)、性能テスト(電源の電圧変動・電源遮断など)といったIEC60068-1&2に準拠したテストを実施します。

JIS規格もIEC規格をベースに制定されており、EN50155ならばJIS規格で要求されるレベルを完全にクリアしていますので、国内の鉄道でも利用できます。たとえばMOXA製品では「TNシリーズ」などでの実績が多くあります。ぜひ、ご安心して利用いただければと思います。次回は、鉄道・バス関係の厳しい品質規格にクリアしたMOXA製品について、もう少し深堀りしたいと思います。


欧州の鉄道規格である「EN50155」に準拠する「TNシリーズ」。耐振動・衝撃性に優れる。