2020 .5.12

【特別インタビュー】FRABA(POSITAL)のインゴ博士に訊く! POSITAL製品の強みと今後の展開

FRABA(POSITAL)のインゴ博士来日! 唯一無二のPOSITAL製品についてインタビューしました

昨年末に開催された「2019国際ロボット展」(IREX)ではケーメックスが取り扱う多くの製品を展示しました。これらのメーカーの中で、今回のイベントに合わせて来日したFRABA社のインゴ博士(工学)【★写真1】に話をうかがいました。

【★写真1】FRABA Pte. Ltd. (フラバ・アジアパシフィック本社 インゴ博士(工学)

「エナジーハーベスティングテクノロジー」で、バッテリーレスを実現した強み

ーー今回のIREXでは多くのFRABA(POSITAL)製品を紹介されていますね。特に注目の製品についてお聞かせください。

インゴ氏:やはりメインは産業用のポジションセンサです。たとえばPositalの磁気式マルチターンアブソリュートエンコーダ【★写真2】は、数多くのエンコーダメーカーの中でも非常にユニークな特徴をもっています。それが12年前に採用した「エナジーハーベスティングテクノロジー」です。その仕組みは内蔵されたウィーガンドセンサ【★写真3】にあります。

これにより磁石の回転によって生じた磁界方向の反転エネルギーを自己回収(自己発電)し、電源供給がなくてもモータの回転数や位置を保持することができるようになりました。以前まではエンコーダにバッテリーを搭載し、メモリの内容を保持していたのですが、この技術を使えば、バッテリーが不要になります。

【★写真2】マルチターンアブソリュートキットエンコーダのラインナップ。

【★写真3】自己発電を可能にする「ウィーガンドセンサ」。
モータ軸に取付けた磁石の回転によって生じた磁界方向の反転エネルギーを自己回収して、
電源供給がなくてもモータの絶対位置を保持できる。

世界最小クラスのバッテリーレス・キットエンコーダを実現できた理由

ーーエンコーダに関しては、世界最小クラスの大きさのキットエンコーダを発表されました。

インゴ氏:はい。これが世界最小クラスのバッテリーレス・マルチターンアブソリュートキットエンコーダです【★写真4】。この中にウィーガンドセンサも内蔵されています。このエンコーダは外径22mmで、小型のステッピングモータやサーボモータなどに適用できます。ステッピングモータはオープンループ制御ですが、エンコーダを使用することで、より精密な制御を行えるようになります。

【★写真4】世界最小クラスのバッテリーレス・マルチターンアブソリュートキットエンコーダお披露目。
分解能は17ビットで、I/FはBISS-C、BISS LINE、RS-485、SSIに対応。

ーーなぜ、ここまで小さいサイズの製品を開発できたのでしょうか?

インゴ氏:マグネットやコイルのサイズの小型化を図り、フェライトの材質を変更したり、ウィーガントワイヤをカスタマイズして小さくしました。全体を小型化しつつ、最適化しているので、従来どおりのエネルギーを回収できているわけです。

ーー貴社のエンコーダは、具体的にどのようなシーンでの適用が考えられますか?

インゴ氏:我々のエンコーダには、さまざまな種類があります。たとえば、このような中空タイプのエンコーダを用意しています【★写真5】。こちらも世界初となるバッテリーレスの中空軸マルチターンアブソリュートキットエンコーダです。産業用機械やロボットでは、駆動モータの軸を中空にして、そこにケーブルやエアチューブなどを通すことで、外に剥き出しにしない設計が求められることもあります。そういった用途に使える製品です。

【★写真5】世界初となるバッテリーレスの中空軸マルチターンアブソリュートキットエンコーダ。
外径80mmまたは100mm、厚さ18mmとスリムな構造。分解能は最大19ビット、I/FはBISS-C、SSIに対応。

工場内ではロボットアームだけでなく、無人搬送車のAGV(Automated guided vehicle)でも利用できます。また日本では、いま医療用の手術ロボットに、この中空タイプのエンコーダをサンプル出荷し、評価していただいているところです。食品系の製造機械についても、クリーンな環境で利用するために、ケーブルを内部に配置し、丸洗いできるような場所で使える製品があります。たとえば防水性(IP69準拠)に優れたヘビーデューティ仕様のエンコーダを用意しています【★写真6】。磁気式は光学式に比べて厳しい環境にも対応できるのです。

【★写真6】防水性(IP69準拠)に優れたヘビーデューティ仕様のエンコーダ。
ステンレス製で錆びず、食品製造などの機械を丸洗いする際に使える製品だ。

ダイナミックな(動的)測定が可能な補正機能付きの傾斜計にも注目!

ーーなるほど。いろいろな種類のエンコーダがありますが、エンコーダ以外にも注目の製品はありますか?

インゴ氏:傾斜計も注目製品の1つです。CT装置の台座の傾斜を計測したり、建設機械でもよく使われています【★写真7】。従来の傾斜計はスタティック(静的)での計測用でしたが、新タイプの傾斜計は、ダイナミックな(動的)測定を可能にする補正機能を有しています。激しく動くような場所でも傾斜を計測することが可能です。この補正機能の有無によって、実際の出力がどのように異なるのかをデモで示しています【★動画1】。

【★写真7】ダイナミックな(動的)測定が可能な補正機能付きの傾斜計。
従来の補正機能がない製品では、測定値がぶれてしまうが、新タイプでは正確で安定した測定が可能になる。

【★動画1】傾斜計の特長がよくわかるデモ動画。

ーー新しい傾斜計でダイナミックな計測が可能になった主な理由は何でしょうか?

インゴ氏:この新しい傾斜計は5年の歳月をかけて開発しました。従来の傾斜計は機械式でしたが、この傾斜計にはジャイロセンサが内蔵されており、電気的に追従して補正をかけられるようになっています。現在、ある建機メーカーに導入していただいていますが、大変好評との評価を頂いております。

ーー最後に日本の顧客に向けてメッセージをお願い致します。

インゴ氏:いまエナジーハーベスティングテクノロジーは日々進化しており、この数年間で現在と比較して10倍近く性能が上がる見込みです。また、生み出した電力を無線通信にも利用できるような開発も進めています。この技術によって、さらにIoT化をお手伝いできることを期待しています。例えば水道メーターの検針などでは、この技術を無線化に適用できるかもしれません。

ーー本日はありがとうございました。ぜひFRABAの製品が日本市場にもっと広がっていくことを願っています。