2018 .3.5

コアな産業用PC探検隊が行く!よいモノだけを世界から(1)

IPCとは? コンシューマーPCとの大きな違いとは何?

初めまして! ケーメックスでIPC製品を担当している技術部の菊池雄一郎です。今回からスタートした新連載「コアな産業用PC探検隊が行く! よいモノだけを世界から」を宜しくお願い致します。

さて、今回は第一回目ということもあり、弊社が取り扱う主要なIPC関連メーカーについて簡単に触れたいと思います。その前に、そもそも「IPCって何?」という方もいらっしゃるかもしれませんね。

IPCとは「Industrial PC」のこと。つまり産業用コンピュータや、それに関連する各種周辺機器のことです。その対象には、産業用の組込みPCから、タッチパネルPC、マザーボード、ポータブルPC、防水・防滴キーボードなど、幅広い製品があります。

では、一般的に使われている民生用PCとIPCとの違いは一体どういう点にあるのでしょうか? まず「産業用」というぐらいなので、高温・多湿、あるいは低温といった過酷な環境下でも使えること、また振動・衝撃などがあっても壊れない堅牢なPCであることは容易に想像できるでしょう。しかし、IPCの本質は耐環境性だけではありません。

実は「長期供給性」があることが最も重要なポイントなのです。IPCは工場現場でよく利用されるため、さまざまな機械と長期にわたり接続しなければなりません。場合によっては10年以上も使うケースもあります。そのため、メーカーが同じIPCモデルをずっと供給してくれることが第一条件になります。

さらに長期供給性に関連することですが、相手側の機械は最初から仕様が変わらずに稼働しているものも少なくありません。そのためIPC製品も当時の仕様に合わせて「古い規格」に対応している必要があるのです。たとえばインターフェースを見てみましょう。

いま市販されている一般的な民生用PCには、かつて標準だった「RS-232Cポート」や「PS/2ポート」などは装備されていません。IPCでは一般的に需要がなくなった「枯れた技術」にも対応しています。まあ、枯れた技術ほど、現場で使う際には安定性があり、信頼性も高いという事情もあるのですが……。

もちろん「信頼性」という点では、IPCのCPUボードに使われる電子部品は、壊れにくいものが使われています。たとえば、電解コンデンサなどの部品は採用せず、可能な限り固体コンデンサを使うように工夫しているのです。IPCは工場の過酷な高熱環境で使われることもあり、耐久性に優れた電子部品が実装されています。

高温・低温・多湿でも安定稼働!堅牢な産業用PCとは?ケーメックスが取り扱う主なIPCメーカーの特徴とは?

民生用PCと比べて、IPCは製品コンセプトも特徴も、かなり異なる点をご理解いただけたでしょうか? ケーメックスでは、さまざまなIPC製品を取り扱っています。これから本コラムでは、そのなかでも特に我々が自信をもってオススメしたいメーカーの代表的な製品について紹介していく予定です。

現在、IPCの世界では多くの台湾メーカーが活躍しています。ケーメックスでは「IEI Integration」「AXIOMTEK」「ARBOR Technology」といった台湾メーカーを中心に、多彩な製品をご提供しています。

今回は第1回目のコラムなので、各メーカーの特徴について軽く触れておきたいと思います。まず筆頭に挙げたIEI Integration【★写真1】は、台湾大手として有名な老舗のIPCメーカーです。ローエンドからハイエンドまでの製品をワイドに取り揃えている点が大きな特徴です。

【★写真1】IEI Integrationの公式Webサイト。

組込みシステム、パネルPC用、組込み用、単一ボード用、ファンレス組込みボックス用などを含む、産業用および組込みコンピュータを揃え、さらにお客様のご希望に合わせたセミオーダー製品にも対応しています。

一方、AXIOMTEK【★写真2】については、小型で低発熱なモデルに対して、特に優秀な製品が多いという評価があります。

【★写真2】AXIOMTEKの公式Webサイト。

またARBOR Technology【★写真3】は、耐環境性に優れた製品開発に注力しているメーカーです。たとえば、同社のIPC製品は鉄道規格に準拠し、振動や衝撃に強いという特徴があります。また耐環境性という点では、高温多湿なインドネシアの離島のような場所でも利用できます。

【★写真2】ARBOR Technologyの公式Webサイト。

最後に、ケーメックスが取り扱うIPC製品についてですが、万が一何かトラブルがあった際には解析対応を実施し、メーカーとの橋渡しをさせていただいております。たとえば、マザーボードが故障した場合、単にパーツ交換だけでなく、「どの場所の」「どんな部品」が壊れてしまったのか、故障部品(CPUやチップセットまわり、電源関係のDC-DCコンバータなど)まで、しっかりと特定してレポートすることもあります。

このようにケーメックスでは、単にIPC製品を提供するだけにとどまらない手厚いサポートも行っていますので、ぜひ安心して我々にIPC製品をご用命いただければ幸いです。では、いよいよ次回から、主要3メーカーのうち最大手となるIEIの製品について、詳しく見ていきましょう。お楽しみに!