2017 .9.27

【ツボその10】既存の2線式ケーブルや構内モデムの電話線で長距離伝送

まだまだ使える! 既存インフラを活用した賢い通信方法を伝授

前回は、既存のRS-232などのシリアル信号を、イーサネットの信号に変換するデバイス「N-Portシリーズ」をご紹介しました。今回もレガシーを活用するための製品として、イーサネットの信号を2線式ケーブルや構内モデムの電話線で使えるようにする製品について説明したいと思います。

最近では、無線で通信するケースも多いのですが、通信距離が短いという欠点があります。数kmぐらいの長距離伝送では、多くのAPを置くことになり、逆にコストも嵩んでしまいます。一方、有線の場合には光ファイバーのように高速通信が可能なインフラもありますが、メディアコンバータが高価で、ファイバーケーブル自体にコストがかかります。

そこで、いまでも電話線などの既存インフラを利用した有線式の伝送方式が利用されることが多いのです。構成もシンプルで、ケーブルコストも安く、運用もラクというメリットがあります。そこでMOXAでは、既存の有線インフラを活用するために、RJ45コネクタからのイーサネット信号を銅線2本に変換し、長距離通信を可能にするDSLイーサネット・エクステンダを用意しています【★写真1】。

【★写真1】既存の2線式ケーブルや構内モデムの電話線を活用し、長距離通信が可能なDSLイーサネット・エクステンダ

たとえば「IEX-402シリーズ」【★写真2】は、100BaseT(X)とDSLポートを1基ずつ備えたエントリレベルの産業用マネージド・イーサネット・エクステンダです。2線式の銅線上で、ポイント・ツー・ポイントの拡張を可能にしています。このシリーズには、主に低帯域・長距離通信が可能な「IEX-402-SHDSL」と、高帯域・短距離通信を行う「IEX-402-VDSL2」の2タイプがあります。

【★写真2】低帯域・長距離通信が可能な「IEX-402-SHDSL」と高帯域・短距離通信を行う「IEX-402-VDSL2」。

前者のIEX-402-SHDSLは、文字通りSHDSL(ITU-T G.991.2:Single-pair High-speed Digital Subscriber Line transceiver)ポート×1を備え、最大通信速度が15.3Mbps で、8㎞(@192kbps)の長距離伝送が可能です。一方、後者のIEX-402-VDSL2は、VDSL2(ITU: G.993.2:Very high speed Digital Subscriber Line transceiver 2)ポート×1を備え、最大通信速度が100Mbpsと高速で、3㎞(@1Mbps)に対応します【★写真3】。

【★写真3】xDSLの転送速度と通信距離の関係。それぞれの特性によって、長距離、あるいは高帯域を選んで使える。

本シリーズの特徴は、産業用のため動作時温度が-40~75℃とワイドであり、厳しい環境でも使用できる点です。またCO/CPEに対する自動ネゴシエーション機能を備え、設定が容易に行える点も大きな特徴です。デフォルトで、CPEステータスをIEX本体の各ペアの一方に自動的に割り当ててくれます。そのため、両方の装置をケーブルで配線するだけで、設定が終了してしまうのです。

さらに新製品として、マルチドロップで使用する長距離通信用イーサネット・エクステンダ「IEX-408E-2VDSL2」【★写真4】もご利用いただけるようになりました。こちらはスイッチ機能を備え、各ドロップポイントに本体を一台ずつ配置して、長距離マルチドロップを構成することが可能です。

【★写真4】新製品の「IEX-408-2VDSL2」は耐障害性に優れ、MOXA独自のTurbo Ring/Turbo Chainや、DSL Link Bypassにも対応。

AC/DC電源アイソレートによってノイズに強く、耐障害性に優れた機能を有しています。以前ご紹介したMOXA独自のTurbo Ring/Turbo Chainに対応しており、途中で通信障害が起きても50ms以内で高速復旧します。もちろん他のネットワーク冗長化機能との相互運用も可能です【★動画1】。

またDSL Link Bypass機能もあり、このモードを有効にすると、デイジーチェーンにおいても、故障したスイッチをバイパスしてスルーできるので大変便利です。メンテナンスのために、スイッチを1台シャットダウンしたい場合にも利用できます【★写真5】。

【★写真5】デイジーチェーンで故障したスイッチをバイパスしてスルーできる便利なDSL Link Bypass機能も備える。

これらの製品群は、海外では交通信号制御や映像監視システムの長距離伝送に利用されたり、地下採掘現場のCCTVモニタリングや制御システムなどにも利用されています。ぜひ国内でも既存インフラを活用して、長距離伝送を実現してください。