2025 .4.24

UPSにスーパーキャパシタという新たな選択肢を

 

一般的にUPSといえば、大型のバッテリを内蔵したDC電源ユニットを想像する方が多いでしょう。しかし、近年、バッテリが原因となる火災が発生しており、資産の損失などの被害を引き起こしています。そこで注目されているのが、スーパーキャパシタ(大容量コンデンサ)を利用した小型軽量なUPS製品です。今回のコラムでは、弊社で取り扱っているARBORのスーパーキャパシタUPSについて、どのような特長や用途があるのか、IPCプロダクトマネージャーの菅谷に詳しく聞きました。

 

用途は産業用PCのバックアップおよび緊急シャットダウン対応

――まずはじめに、スーパーキャパシタを使ったUPSについて教えてください。どのような製品なのでしょうか。

 

菅谷:従来の産業用UPSはリチウムイオン電池などバッテリを利用したものが一般的ですが、今回ご紹介するのは、蓄電池の部分をバッテリからスーパーキャパシタ、つまり大容量のコンデンサに置き換えた製品です。スーパーキャパシタを利用するメリットのひとつが、小型軽量化できるという点です。また、コンデンサは一般的にバッテリより充放電での劣化が少なく、寿命が長いとされています。完全放電でき、火災や爆発の可能性が低い点もバッテリより優れています。バッテリではないので、飛行機での輸送も可能です。また、ARBORのスーパーキャパシタUPSは、管理用のアプリケーションも用意されているので、電源の状態をモニタリングしたり、アラートの出し方の設定も可能です。

 

短時間バックアップ電源の意味

――一方でバッテリより容量が小さくなると思いますが、どのような用途、アプリケーションに採用されていますか?

 

菅谷:ARBORのスーパーキャパシタUPSは、主に産業用PCのバックアップ電源として使われています。ただし、バッテリほど長時間はもたないので、緊急時にシャットダウンの時間をかせぐといった使い方がメインになります。たとえば、瞬断、電圧降下、電源トラブルなどの異常を検知した場合、正常にシャットダウンさせシステムの暴走や他の機器への影響を抑える必要がありますが、そのためのバックアップ電源として機能します。予備電源で稼働させる考え方もありますが、予備電源が切れればシャットダウンが必要なのは同じです。電源異常の状況によっては、システムのシャットダウンを優先させる必要があります。

 

長時間のバックアップはできませんが、トラブル時にPCを正常にシャットダウンできれば、そのときのデータも守ることができます。瞬断などで強制終了となった場合、データの状態がどこまで保証されるかわかりません。電源が復旧しても、同じ状態から再スタートできるとは限らないのです。しかし、PCが正常終了していれば、素直に復帰できる可能性が高くなります。

 

――実際にどれくらいの時間、電源として機能できるのですか?

 

菅谷:モデルごとのキャパシタの容量やバックアップするPCの消費電力に依存しますが、たとえばSCP CUBE MK2シリーズのSCP-41-MK2というモデルでは、20Wの出力なら最大180秒、120Wなら20秒弱の電源を保証します。

 

軽量かつ小型であることのメリット

――制御システムや工作機械でもPCによるコンピュータ制御が一般化しているので、それらの緊急用電源というわけですね。

 

菅谷:そうですね。工場などの制御システム、産業ロボット、CNC等の制御PCでの応用がメインとなりますが、そのための特長がもうひとつあります。いちばん大きいモデルの本体サイズが縦横18 cm × 10 cm(奥行15cm)で重さは約2kgと、通常のUPSと比較し軽量、小型です【★写真1】【★写真2】。

 

【★写真1】SCP CUBE MK2シリーズ: 500mlペットボトルと比較しても小型なのが分かる

 

【★写真2】重量も約2kgと軽量

 

背面にはDINレールのマウント金具がついているので、制御盤内などの狭い場所にもPCや他のモジュールといっしょに簡単に設置することができます【★写真3】。組み込み機器用に筐体がない基板むき出しのタイプもあるので、製品やロボットなどに直接組み込むことも可能です。

 

【★写真3】付属の取り付け金具でDINレールに簡単に設置可能

 

――その他にも採用の可能性のあるアプリケーションはありますか?

 

菅谷:実績としては、産業用PCや産業ロボットなど工場での用途以外に、無人の建設機械に使われた例があります。あと、バッテリなどの重量物を積めない機器、発火リスクを抑えたい設備に設置するPCならば、導入する余地はあると思います。

 

ARBORのスーパーキャパシタの強み

――ARBORのスーパーキャパシタの強みは何でしょうか?

 

菅谷:スーパーキャパシタを使った同様なUPS製品自体があまり存在しないので、製品そのものの他メーカーとの比較は難しいのですが、ケーメックスONEでは、工場のネットワーク機器や装置といった制御システム全体のソリューションやシステム構築も行っているため、システム全体の中でスーパーキャパシタUPSのソリューションも提供可能です。また、1年間の製品保証の他、導入前に効果を試したいといったニーズに対応するため、無料の機器貸し出しも行っています。

 

――システム全体の機器構成の中で、コンポーネントごとに最適なUPSソリューションを考慮した設計、提案、サポートができるということですね。今日はありがとうございました。

 

ARBORのスーパーキャパシタUPSについてご興味をお持ちの方は、弊社までお問い合わせください。サンプルの貸し出しについても、ご相談承りますのでお気軽にご連絡ください。

 

コラムで紹介されている製品はこちら

スーパーキャパシタ搭載産業用UPS

SCP CUBE MK2シリーズ

▶SCP CUBE MK2シリーズ製品ページを見る

 

 

スマート産業用UPSモジュール

SiPB-1690シリーズ

▶SiPB-1690シリーズ製品ページを見る